燃料不要で推力を生むイオンエンジンを自宅で作る方法

イオンエンジンは電気推進とよばれる方式を採用したロケットエンジンの一種で、放電により空気やガスをイオン化して加速し、推力に変換します。人工衛星にも搭載されているこのイオンエンジンを自宅で作る方法を、エンジニア兼YouTuberのIntegzaことジョエル・ゴメス氏が解説しています。
I built an IONIC PLASMA THRUSTER (Best Design) - YouTube

ゴメス氏の前にあるのは、2本の電線。

この2本の電線の前に、火のついたろうそくを置きます。

すると、ろうそくの火は風にあおられたときのように小さくなってしまいました。

部屋の電気を消すと、こんな感じ。手前の細い電線から、奥にある太い電線に青い光が走っています。

2本の電線に高い電圧をかけると、細い電線から太い電線にコロナ放電が起こります。このコロナ放電によって、「イオン風」と呼ばれる気流が発生します。

細い電線を何本も張った電極と太い電線を何本も張った電極を用意して高電圧をかけると、コロナ放電の量も増え、必然的にイオン風の力も強くなります。

電極を互いに何枚も重ねて置き、その前に火をつけたマッチをかかげます。

一瞬で火が消えてしまいました。

電極を何枚も重ねると十分に強い気流が発生しますが、スラスターそのものが大型化してしまい、推力としては期待できません。そこで、ゴメス氏はイオンスラスターの小型化・軽量化を目指しました。

用意するのはリチウムイオンバッテリーと、Amazonで取り扱われていた高圧変換器。

金属製の円筒と、シールドをむいてほぐした電線に高電圧をかけると、こんな感じでコロナ放電が発生します。

電圧を上げます。

すると、発生する気流もかなり強くなり、火のついたロウソクを置くと火が吹き消されてしまいました。

とがった部分を作ってコロナ放電を発生させやすくするため、シールドをむいた電線ではなく、ギザギザに切り込みを入れた金属部品を用意します。

コロナ放電を受ける方は気流をまとめるために円筒である必要がありますが、形状を工夫することで短くても気流を効率良く発生させることが可能。

3Dプリンターでコロナ放電を受ける方の電極を樹脂で出力します。

導電性を持つグラファイトのスプレーを用意。

出力したパーツに吹きかけます。

次に用意したのが硫酸銅。

ビーカーに硫酸銅を注ぎ、電源のマイナス極をパーツに、もう片方のプラス極を銅箔(どうはく)につなげます。

そのままパーツを硫酸銅の中でじゃぶじゃぶと動かしています。

すると、パーツが銅でメッキされました。

2つのパーツを3Dプリンターで出力した土台に固定します。

高圧変換器につなげます。

重量は53gです。

スイッチを入れると、ギザギザのパーツからメッキを施したパーツにコロナ放電が走ります。

メッキしたパーツは横からみると少しすぼまっており、発生した気流をまとめます。そのため、ある程度離れたところに火のついたろうそくを置くとすぐに火は消えてしまいました。

30cmほど離して置いても火が消えてしまったのを見ると、発生した気流はかなり強いことがわかります。

煙を使って気流を観察したところが以下。

この小型化したイオンスラスターを発泡スチロールの板の上に設置します。

スイッチを入れると、スーッと水の上を進みました。

発泡スチロールの板の上に複数のイオンスラスターを設置すると、推力がアップしたようで進む速度もアップします。

今度はヘリウムを詰めたゴム風船にイオンスラスターをとりつけます。

ゴム風船は、イオンスラスターの推力によって静かに動き出しました。

このイオンスラスターは比較的簡単に家庭にあるもので作ることが可能。しかし、高電圧を用意する必要があることから、危険な実験であることをゴメス氏は警告しています。

・関連記事
MITがエンジンやプロペラを使わずに「イオン推進器」で空を飛べる飛行機を開発 - GIGAZINE
人工衛星の推進器「ホールスラスタ」の原理は実はよくわかっていない - GIGAZINE
世界初の安全で効率的な水性アルミニウムイオン電池の開発が第1段階に到達 - GIGAZINE
光の99%の速度を出せる「ヘリカルエンジン」をNASAのエンジニアが考案 - GIGAZINE
たった数万円で作れる激安人工衛星「$50SAT - Eagle2」 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, 動画, Posted by log1i_yk
You can read the machine translated English article How to make an ion engine that produces ….