広く引用されている論文に虚偽の主張があったものの著者は誤りを認めながら訂正を拒否し研究機関も事実を無視して放置しているとの指摘

6000回以上引用され、政府高官やアメリカの元副大統領まで言及したことのある論文に、致命的な虚偽の主張があったにもかかわらず、訂正も処罰もないとコロンビア大学の統計学および政治学の教授であるアンドリュー・ゲルマン氏が指摘しています。
False claims in a widely-cited paper. No corrections. No consequences. Welcome to the Business School. | Statistical Modeling, Causal Inference, and Social Science
https://statmodeling.stat.columbia.edu/2026/03/24/false-claims-in-a-published-no-corrections-no-consequences-welcome-to-the-business-school/

問題の論文は、経営科学関連の学術誌であるManagement Scienceに2014年に掲載された「The Impact of Corporate Sustainability on Organizational Processes and Performance」という論文です。この論文は「持続可能性の高い企業は、株式市場と会計上のパフォーマンスの両面において、長期的に見て同業他社を大きく上回る」と主張しています。
この論文が6000回以上引用され、経済界の大物や政府高官、元副大統領などに引用されることとなった理由のひとつは、「政治的な立場を問わず広く受け入れられるような、心地よいメッセージを発信していたためではないか」とゲルマン氏は指摘しています。
左派にとっては環境的・社会的持続可能性を支持する証拠となり、右派にとっては持続可能性を重視するなら政府の規制なしでも実現できるという、自由市場の成功例のひとつであるためです。また、中道派にとってもシステムが機能しているというメッセージになります。
「この論文の主張は、企業は善行をする事で成功するという、ビジネススクールの基本的かつ独りよがりなイデオロギーにまさに合致するものです」とゲルマン氏は指摘しました。

ボストン大学クエストロム経営大学院で教授を務めるアンディ・キング氏は、「長らく信頼できる科学を育成するための制度が機能不全に陥っている」という主張に抵抗し続けてきた人物です。キング氏は学術界の問題たる編集者・査読者・研究倫理担当者がひっそりと職務を遂行していると信じてきたそうです。
しかし、キング氏が問題の論文を再現しようとしたところ、論文には重大な欠陥や誤った記述が存在することを発見したそうです。当初、キング氏は「問題の論文は権威ある学術誌のManagement Scienceに掲載されており、著者も名門機関に所属しているため、論文の内容訂正は容易なことだろう」と考えていたそうです。
しかし、著者はキング氏の訴えを無視し、Management Scienceも対応を拒否し、学術界も見て見ぬふりをしたそうです。名前は明かされていないものの、2つの大学は論文の著者が誤解を招く報告書を掲載したことを認めたそうですが、研究の不正の証拠無視したとキング氏は主張しています。
なお、当該論文は年間約2000回も引用されており、投資実務や公共政策に大きな影響を与えており、2006年以降、Management Scienceで最も引用された論文であるとキング氏は指摘しました。

キング氏によると、論文に記載されている方法は著者が実際に使用した方法とは異なるものだったそうです。キング氏は著者に長年にわたって問題を指摘してきたそうですが、著者がこの事実を認めたのは、2年間のやり取りの末ようやくでした。しかし、著者は論文の訂正を拒否し続けています。
Management Scienceは、同誌の規定では著者のみが論文の訂正を要求できるとして、著者が対応しないと判断した論文を訂正することはできないと返答したそうです。キング氏は論文の著者が誤りを認めながら訂正を拒否したため、研究倫理局にも連絡しています。
論文の著者が所属するビジネススクールのロンドン・ビジネス・スクールは、自身が分析を行っているわけではないため違反はないと主張。ハーバード・ビジネス・スクールは内部調査の有無や結果について一切公表を拒否。そして、オックスフォード大学は論文はエクルズ氏(論文の著者のひとり)がハーバード・ビジネス・スクールに在籍していた時期に公開した論文であるため、今回の行為に対する責任はハーバード大学にあると主張したそうです。

ゲルマン氏は「カリフォルニア大学の教授が露骨なデータ改ざんを行ったのに何の処罰も受けていないこと」と「コーネル大学の教授が大量の研究不正を行い、最終的に辞職を余儀なくされたにもかかわらず、それには長い時間がかかり大学は外部の懸念に対応しなかったこと」を挙げ、研究倫理局や同様の組織にはほとんど期待しなくなってしまったと言及。実際、ラトガース大学の政治学教授は、盗用した内容を含む本でアメリカ政治学会から賞を受けています。また、アメリカ政治学会は盗用を知らされた後も、賞を取り消すことも、盗用された作品の著者と賞を分け合うことも拒否しました。
また、不正を起こした人物が、問題を暴露した人を攻撃するケースがあり、これが非常に厄介であるとキング氏は言及しています。これについて、キング氏は「まるで、重要な人物は皆カントリークラブの仲間同士で、あらゆるやり直しを指摘する生意気なキャディに対処しなければならないかのようです。彼らはクラブのメンバーでありながらキャディの味方をする私たちのような人間に対して、さらに苛立ちを募らせるかもしれません」と語りました。
ゲルマン氏は「究極の解決策は、このような人々を新設大学の『セカンドチャンス大学』に入学させることでしょう。この大学には、不正を犯した研究者や、出典を明記せずにオンライン上のソースから資料を盗用してチェスの本を書いた数学者、不名誉な霊長類学者、アニル・ペッティ、ローレンス・トライブ、ローレンス・サマーズ、何の落ち度もないのに偽データを使って論文の共著者になってしまった不運な人々などが挙げられます。そうした人々にとって実に素晴らしい場所となるでしょう。そして、この大学は学生が学期末レポートを書くのにチャットAIを使うことを全面的に推奨する唯一の大学となるでしょう!」と記しました。
なお、ゲルマン氏は「真面目なところ、この問題にどう対応すればいいかわかりません。ここで大声で叫び続けますが、あまり効果はないようです」と記しています。
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