Adobeの2兆8000億円超でのFigma買収についてEUの規制当局が間もなく詳細な調査を開始

PhotoshopやPremiere Proなど、数々のクリエイティブツールを開発するAdobeによるデザインツール開発企業・Figmaの買収について、欧州連合(EU)の規制当局が独占禁止法違反の疑いをかけており、間もなく詳細な調査を開始すると報じられました。

Adobe’s $20 Billion Figma Takeover Faces EU Antitrust Probe - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-07-24/adobe-s-20-billion-figma-deal-faces-eu-probe-as-scrutiny-grows

Adobe's Figma deal faces full-scale EU antitrust probe, sources say | Reuters
https://www.reuters.com/markets/deals/adobes-figma-deal-faces-full-scale-eu-antitrust-probe-sources-say-2023-07-24/

2022年9月、Adobeは200億ドル(約2兆8300億円)でFigmaを買収すると発表しました。Figmaは複数人で同時にアプリやウェブページのプロトタイプを作成したり、アイデアを共有したりすることができるデザイン管理ツールを開発しており、Adobeも似た機能を備えた「Adobe XD」を開発しています。

Adobeが2兆円超えでデザインツール「Figma」を買収、Figmaブランドは存続の予定 - GIGAZINE

この買収に対して、アメリカ司法省は独占禁止法違反の疑いでAdobeを提訴する準備を進めています。

Adob​​eのFigma買収は独占禁止法違反だとしてアメリカ司法省が訴訟を準備していると報じられる - GIGAZINE

これに続く形で、欧州連合(EU)の規制当局がAdobeによるFigma買収を調査するべく準備を進めていることが報じられていました。そして新たに、Bloombergとロイターが「EUの規制当局による詳細な調査が間近に迫っている」と報じています。

EUでは企業の買収が独占禁止法違反に相当するか否かを判断するために、「フェーズ1」や「フェーズ2」と呼ばれる調査期間を設けます。今回の買収案件は予備審査期間を経て、間もなくフェーズ2での調査に移行することが検討されています。フェース2は約90営業日を要するため、フェーズ1よりも調査期間が長くなることが想定されています。規制当局は通常、競争上の懸念を解消するために救済措置を設けますが、この懸念に根拠がないことが明らかになった場合、無条件で承認を与えることもあるそうです。

しかし、Bloombergが今回の買収案件に詳しい関係者から入手した情報によると、Adobeは潜在的な競争上の懸念を修正するための救済策を提案していないため、EUの規制当局による詳細な調査はすぐにも始まる可能性がある模様。

EUの執行機関である欧州委員会は2023年初頭に、AdobeのFigma買収について「インタラクティブな製品設計やホワイトボードソフトウェア市場に脅威をもたらす可能性がある」と警告していました。EUの規制当局は、2023年8月7日までに予備審査を終える予定であると発表しています。

今回の買収について、Bloombergは「今回の買収は、Figmaがあっという間に獲得した『中小企業や日常的にツールを利用するユーザーが、より多くのクリエイティブな作業をウェブ上で行うようになる』という市場に対する大きな賭けです。Adobeはこういったユーザー向けに安価で合理的な製品を投入しているものの、そのほとんどは依然として専門家向けのヘビー級プログラムが担っています」と述べています。

なお、Adobeの広報担当者は「買収について世界中の規制機関と生産的な話し合いを続けています」と述べていますが、FigmaはBloombergからのコメント要請に応じていません。

これに加えて、Adobeはアメリカ司法省による買収阻止のための訴訟に対する準備も進めているそうです。

また、イギリスの独占禁止法関連当局である競争・市場庁は、2023年7月13日にAdobeが独占禁止法違反に関する救済策を提示しなかったため、より長期的な審査を開始すると発表しています。なお、競争・市場庁は2023年12月27日までに調査結果を発表する予定です。