AMDの3D V-Cache搭載ゲーミングCPU「AMD Ryzen 9 7950X3D」ベンチマーク結果が公開中、Ryzen 9 7950Xとほぼ同性能だがゲーミング用途だとパフォーマンスが上回る
AMDがゲーミングPC向けCPU「Ryzen 9 7950X3D」「Ryzen 9 7900X3D」を2023年3月3日(金)11時から発売します。AMDの「3D V-Cacheテクノロジー」を搭載してL3キャッシュが増量し、さらに電力効率もアップしているという最上位モデル・Ryzen 9 7950X3Dのレビューを、ハードウェア関連のニュースサイトであるAnandTechが公開しています。
The AMD Ryzen 9 7950X3D Review: AMD's Fastest Gaming Processor
https://www.anandtech.com/show/18747/the-amd-ryzen-9-7950x3d-review-amd-s-fastest-gaming-processor
Ryzen 9 7950X3DとRyzen 9 7950Xのスペックをまとめた表が以下。
Ryzen 9 7950X3D | Ryzen 9 7950X | |
製造プロセス | TSMC 5nm FinFET | TSMC 5nm FinFET |
パッケージ | AM5 | AM5 |
コア・スレッド | 16コア・32スレッド | 16コア・32スレッド |
ベース周波数 | 4.2 GHz | 4.5 GHz |
ターボ周波数 | 5.7 GHz | 5.7 GHz |
対応メモリ | DDR-5200 | DDR-5200 |
L2キャッシュ | 16 MB | 16 MB |
L3キャッシュ | 128 MB | 64 MB |
PCIe | 5.0 | 5.0 |
内蔵GPU | Radeon Graphics(2コア) | Radeon Graphics(2コア) |
TDP | 120 W | 170 W |
PPT | 162 W | 230 W |
Ryzen 7000X3Dシリーズの特徴は、3D V-Cacheテクノロジーを組み込んでいるということ。3D V-Cacheテクノロジーはその名の通りCPUに搭載されているメモリキャッシュを増やす技術で、CPU上にキャッシュ用のSRAM(V-Cache)を貼り付けることでL3キャッシュの容量が増大します。3D V-Cacheテクノロジー自体は2022年4月に発売された「Ryzen 7 5800X3D」に搭載されています。
Ryzen 9 7950X3Dは非対称チップレット設計を採用しており、CCD(CPUダイ)の1つは通常のZen4 CCDですが、もう1つのZen 4 CCDには64MBのV-Cacheが搭載されています。これはつまり、片方のCCDには32MBのL3キャッシュが、もう片方のCCDには96MBのL3キャッシュが搭載されていることになります。
また、V-CacheをCCDに取り付けると最高クロック速度が制限され、約5.25GHzに制限されます。Ryzen 9 7950Xと比べてRyzen 9 7950X3Dのベース周波数がわずかに低くなっているのはこのV-Cacheが原因。そこで、AMDはアプリケーションの処理に応じて適したCCDにアクセスするように設計しています。V-Cacheを搭載したCCDと普通のCCDを使用することで、複数のタスクを同時に行う際にパフォーマンスを最大化できるようにバランスをとっているというわけです。また、「AMD PPM Provisioning File Driver」はゲーム動作時により高速に処理が行えるCCDを自動で判別し、片方のCCDを休止させてもう片方で処理を行う機能を有しているとのこと。
ハードウェア関連ニュースサイトのAnandTechがタスクマネージャーでバックグラウンドプロセスをチェックした画面が以下で、「AMD 3D V-Cache Performance」という項目が表示されています。
AnandTechがRyzen 9 7950X3Dのテストを行った際の環境が以下。
CPU | Ryzen 9 7950X3D |
マザーボード | GIGABYTE X670E Aorus Master (BIOS 813b) |
メモリ | G.Skill Trident Z5 Neo 2x16 GB DDR5-5200 CL44 |
冷却システム | EK-AIO Elite 360 D-RGB 360 mm AIO |
ストレージ | SK Hynix 2TB Platinum P41 PCIe 4.0 x4 NMve |
電源 | Corsair HX1000 |
GPU | AMD Radeon RX 6950 XT (ドライバー ver31.0.12019) |
OS | Windows 11 22H2 |
Microsoft Office使用時のピーク電力を計測したところが以下。Ryzen 9 7950X(赤)が約222Wであるのに対して、Ryzen 9 7950X3D(オレンジ)は約145Wと、消費電力がかなり減っていることがわかります。
そして、Word・Excel・PowerPointを使った時のパフォーマンスが以下の棒グラフで、グラフが長いほどパフォーマンスが優れていることを示しています。UL Procyonによる「写真のバッチ編集」以外で、Ryzen 9 7950X(赤)がRyzen 9 7950X3D(オレンジ)を上回っていることがわかります。
3Dソフト・Blenderでのレンダリング時間をまとめたグラフが以下。数値が小さいほどパフォーマンスが優れていることを示します。これを見ると、Ryzen 9 7950X(赤)がRyzen 9 7950X3D(オレンジ)よりもレンダリング時間がわずかに短くなっていますが、その性能はほぼ同等といえます。
7-Zipによる圧縮・解凍・結合のベンチマーク結果が以下。いずれも数値が高いほどスコアが優れていることを示します。圧縮ではRyzen 9 7950X3D(オレンジ)の方が、解凍と結合ではRyzen 9 7950X(赤)の方がわずかに良いスコアを計測していますが、パフォーマンスはほぼ同じレベル。
さらにAnandTechは、CineBench・Geekbench 4.0・Geekbench 5でのベンチマークを行っています。CinebenchはR10・R11.5・R15・R20でシングルスレッド(ST)とマルチスレッド(MT)でCPU性能をスコア化しています。その結果は、すべてでRyzen 9 7950X(赤)の勝利。
Geekbench 4.0はこんな感じ。シングルスレッド(ST)とマルチスレッド(MT)の両方でRyzen 9 7950X(赤)のスコアがRyzen 9 7950X3D(オレンジ)を上回っています。
Geekbench 5の結果でも同じくRyzen 9 7950X(赤)がRyzen 9 7950X3D(オレンジ)に勝利。
Ryzen 9 7950XがゲーミングPC向けCPUということで、AnandTechは平均描画フレームレート(FPS)と5パーセンタイルFPSを計測しています。Civilization VIの4K解像度だと、平均FPSはRyzen 9 7950X(赤)、5パーセンタイルFPSはRyzen 9 7950X3D(オレンジ)の勝利。
World of Tanksだと平均FPSと5パーセンタイルFPSの両方でRyzen 9 7950X3D(オレンジ)の勝利。
グランド・セフト・オートVも両方でRyzen 9 7950X3D(オレンジ)の勝利。
ボーダーランズ3もRyzen 9 7950X3D(オレンジ)の勝利。
ヒットマン3もRyzen 9 7950X3D(オレンジ)の勝利。
Ryzen 9 7950X3DはRyzen 9 7950Xよりも消費電力が抑えられており、ゲームプレイでのパフォーマンスでもほとんどのタイトルでRyzen 9 7950X3DがRyzen 9 7950Xを上回るパフォーマンスを示しました。ただし、すべてのタイトルにおいてではなく、一部のタイトルではRyzen 9 7950Xの方が高いパフォーマンスを示したこともありました。また、ゲームプレイ以外のコンピューティングではRyzen 9 7950XがRyzen 9 7950X3Dを上回るケースも多く見られました。
一連の結果から、AnandTechは「Ryzen 9 7950X3Dはゲームプレイ以外にレンダリングやエンコードなど一部のタスクで優れたパフォーマンスを発揮しますが、総合的に見るとRyzen 9 7950Xが依然としてAMDのCPUで最もパフォーマンスが優れているということは明らかです」と評価しています。
また、AMD PPM Provisioning File DriverとXbox Game barの相性の問題なのか、シミュレーションゲーム「Factorio」のベンチマークモードの実行が正しく検出できないこともあったそうです。これは、Ryzen 9 7950X3DでV-Cache搭載CCDを使って演算を行うように強制したことが原因だとAnandTechは分析しています。ただし、ほとんどのゲームでAMD PPM Provisioning File Driverは問題なく機能しており、片方のCCDにV-Cacheを搭載するというAMDの戦略はおおむね正しかっただろうと論じています。
AnandTechは「記事作成時点でRyzen 9 7950X3DよりもRyzen 9 7950Xの方が安く、ゲームとコンピューティングパフォーマンスのバランスが取れているのはRyzen 9 7950Xの方です。ただし、ゲーミング用途でかつよくプレイするタイトルが3D V-Cacheの恩恵を受けるとわかっている場合は、Ryzen 9 7950X3Dの方がおすすめです」と評価しています。
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