動画

他のアリを洗脳して巣をまるごと乗っ取ってしまうサムライアリの習性とは?


アリは繁殖を担う少数の女王アリと、育児やエサの調達を行う多数の働きアリ、餌を得るための狩りや巣の防衛を担う兵隊アリが巨大な群れを構成する社会性昆虫だといわれています。そんな中、なんと他のアリを洗脳してコミュニティをまるごと乗っ取ってしまうという戦略で生き残っている「サムライアリ」を、さまざまな科学をアニメーションで解説するYouTubeチャンネル・Kurzgesagtが取り上げています。

The Most Brutal Ant: The Slaver Ant Polyergus - YouTube


サムライアリは「Polyergus samurai」という学名を持つ、全長4mm~7mmのアリです。形態には女王アリと働きアリの2種類がいますが、サムライアリの働きアリは他のアリと異なり、せっせとエサを集めることをしません。


サムライアリの特徴は、クロヤマアリ(Formica japonica)など他のアリの巣を襲って乗っ取り、相手の働きアリを奴隷のように働かせるという習性を持ちます。


サムライアリの斥候役を務める働きアリがクロヤマアリの巣を見つけると、自分の巣に戻って興奮フェロモンを分泌し、ほかの仲間たちと一緒にクロヤマアリの巣に攻め込みます。


サムライアリに攻め込まれたことを察知したクロヤマアリは、お尻からギ酸を飛ばして攻撃します。


しかし、サムライアリにギ酸は効かず、クロヤマアリはやられてしまいます。


同時にサムライアリは特殊なフェロモンを分泌することで、防御側のクロヤマアリの連携を崩します。


あっという間にクロヤマアリの巣の奥深くまで侵入したサムライアリの軍隊は、クロヤマアリを全滅させるのではなく、まず巣の奥にある卵を奪って自分の巣に持ち帰ります。


そして、巣に持ち帰った卵の一部はエサとして食べられますが、そのまま卵をふ化させて、生まれてきたクロヤマアリを自分の奴隷として働かせます。


アリというのは社会的な昆虫と呼ばれていますが、人間のように視覚で仲間かどうかを見分けているのではなく、体表面の化学物質をかぎ分けることで仲間かどうかを判断し、コミュニケーションを取っています。


しかし、サムライアリはコミュニケーションを取る能力が遺伝的に欠如していると考えられており、エサを集めてくるというコミュニケーションによって成立する集団行動が非常に苦手です。そこで、サムライアリは自分の巣で生まれたクロヤマアリの幼虫に、サムライアリの仲間であることを示す化学物質を塗りたくります。


すると、奴隷となったクロヤマアリはサムライアリの巣を維持するために集団行動を取ります。つまり、サムライアリは自分たちに苦手な集団行動を、他の種を奴隷にすることで可能にしているというわけです。このクロヤマアリはもうサムライアリだけを仲間としか認識できないので、本来の仲間であるクロヤマアリに遭遇した場合、攻撃して殺してしまうこともあるそうです。ただし、奴隷となったアリは数カ月しか生きられないので、サムライアリは定期的に他のアリを奴隷にしつづけなければなりません。


そして、サムライアリのコミュニティの中心となるのが、繁殖を担う女王アリです。


サムライアリの働きアリは集団行動ができないので、自分の巣を作るにはやはり奴隷が必要となります。そのため、サムライアリの女王アリはなんと相手の巣に直接乗り込みます。


そして、相手の女王アリを倒し、その化学物質を自分の体表面にこすりつけることで、相手のコミュニティの女王アリになりきり、そのまま相手コミュニティを乗っ取ってしまいます。


ただし、1つの巣に女王アリが複数存在することもあります。女王アリは女王アリで権力争いに戦々恐々とする日々を送っており、1匹の女王アリになりきったら終わりではありません。


もし他の女王アリに負けてしまえば、働きアリによって殺されてしまうことも。


しかし、すべての女王を倒してしまえば巣の新しい女王として君臨し、新しいコミュニティを形成します。このように、アリはコミュニティ同士でし烈な争いを繰り広げているというわけです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
推定10億匹のカニが消失しアラスカのカニ漁シーズンがキャンセルに - GIGAZINE

「一生に1羽の伴侶を大事にする」というペンギンは本当に一夫一妻制なのか? - GIGAZINE

地球上の全アリの数は「2京匹」 - GIGAZINE

「農業を実践する哺乳類」が人間以外で初めて確認される - GIGAZINE

昆虫が「痛み」を感じている可能性があるという研究結果 - GIGAZINE

in 生き物,   動画, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.