サイエンス

ケチャップがほとんど空になったボトルから飛び散ってしまう理由が科学的に解明される


ほとんど空になったボトルからケチャップを絞り出そうとしたところ、いきなりケチャップが飛び散って机や服が汚れてしまった経験がある人は多いはず。一体なぜ、空に近いボトルからケチャップが飛び散りやすいのかについて、オックスフォード大学の科学者であるCallum Cuttle氏らの研究チームが実験に基づいた理論モデルを考案しました。

Dynamics of compressible displacement in a capillary tube
https://doi.org/10.48550/arXiv.2112.12898

New mathematical model could help avoid spattering squeezy sauce bottles
https://eng.ox.ac.uk/news/new-mathematical-model-could-help-avoid-spattering-squeezy-sauce-bottles/

Oxford scientists crack case of why ketchup splatters from near-empty bottle | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2022/11/the-physics-of-keeping-those-last-bits-of-ketchup-from-splattering/

2022年11月に開催されたアメリカ物理学会の流体力学部門の年次総会で研究結果を発表したCuttle氏は、「(ケチャップが飛び散ることは)迷惑で潜在的に恥ずかしく、服を台無しにしてしまう可能性がありますが、これについて私たちは一体何ができるでしょうか?」「さらに重要なことに、この現象を解明することは人生の他の問題にも役立つでしょうか?」と話しています。

ケチャップは水のように面と並行方向に滑らせる力(せん断応力)で粘度が変わらないニュートン流体ではなく、加わる力によって粘度が変化する非ニュートン流体です。非ニュートン流体にはケチャップの他にも血・ヨーグルト・グレービーソース・泥などが挙げられ、ケチャップは液体というよりも「柔らかい固体」のような性質を持っているとのこと。

Cuttle氏は残り少ないケチャップが飛び散ってしまう現象について解明するため、オックスフォード大学のChris MacMinn准教授らと共に実験を行いました。研究チームは、注射筒(シリンジ)の中にケチャップとさまざまな量の空気を注入して押し出し、空気の量によってケチャップの流量や飛び散るかどうかに影響が出るのかを確かめました。また、ケチャップの代わりにシリコンオイルを使用して、粘度やその他の変数を制御した実験も繰り返し行ったそうです。


実験の結果、1ミリリットル以上の空気が注入されたシリンジでは、流体を押し出す際に飛び散る現象が発生することがわかりました。Cuttle氏は、「この結果は、飛まつを発生させて不安定な流れを作り出すには、シリンジやボトルの中にいくらかの空気が必要であることを示しています」と述べています。

研究チームによると、ボトルの口からケチャップが飛び散るには一定のしきい値が存在し、しきい値を下回った状態では空気の圧力とケチャップが流れるバランスが取れているため、スムーズにケチャップが出てくるとのこと。しかし、しきい値を超えると空気が過圧縮されてケチャップを押し出す力が増し、これによってケチャップの粘度が低下するため、ボトルの口から液体のようにケチャップが飛び散ってしまうとCuttle氏らは報告しています。


Cuttle氏は、ケチャップが残り少なくなるとその分だけ強くボトルを押し出す必要があり、結果としてケチャップが飛び散る可能性が高くなると主張。「ボトルが空に近づくと、中身はほとんど空気になります。ボトルを絞ると中の空気が圧縮され、圧力がかかってケチャップが外に飛び散ってしまうのです」と述べました。

ケチャップが飛び散ってしまうのは押し出す際の圧力が問題であるため、ボトルをゆっくりと絞って空気の圧縮速度を低下させることで、ケチャップが飛び散る危険性を減らせます。また、ボトルが空になってきたらケチャップのキャップを外し、より直径が大きい首の部分からケチャップを出すことも有効です。Cuttle氏は、「キャップのバルブはケチャップ漏れを防ぐのに役立ちますが、純粋にケチャップの飛び散りという観点からは、バルブを取り外すことは理にかなっています」「これは常識ですが、今はそれを裏付ける厳密な数学的枠組みがあります」と述べています。

今回の研究結果は、単にケチャップが飛び散る現象を解明するだけにとどまらず、二酸化炭素を帯水層に注入して貯留する取り組みや、特定のタイプの火山噴火の理解、つぶれた肺の再膨張、より優れた燃料電池の開発など、多岐にわたる分野で重要な知見をもたらす可能性があるとのこと。なお、査読前の論文はプレプリントサーバーのarXivに掲載されています。

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in サイエンス,   , Posted by log1h_ik

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