サイエンス

「血液型」によって比較的若い頃の脳卒中発症リスクが異なることが判明


脳の血管が詰まったり破れたりする脳卒中は世界中の人々に影響を及ぼす病気であり、これまで脳卒中リスクに関するさまざま研究行われてきました。新たな研究では、「血液型がA型の人は60歳未満の比較的に若いうちに脳卒中を発症するリスクが高い」という結果が示されました。

Contribution of Common Genetic Variants to Risk of Early Onset Ischemic Stroke | Neurology
https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000201006

Your blood type could predict your risk of h | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/963353

Your Blood Type Affects Your Risk of an Early Stroke, Scientists Find : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/your-blood-type-affects-your-risk-of-an-early-stroke-scientists-find

血液型は、血球の表面にある抗原や血清中に含まれる抗体の違いを利用した血液の分類法であり、最もよく知られているものがA型・B型・O型・AB型の4つに分類する「ABO式血液型」です。ある血液型の患者に異なる型の血液を輸血すると、抗原と抗体の組み合わせによる免疫反応で重大な副作用が生じる場合があるため、血液型の分類は医学的にも重要です。

また、近年では血液型がさまざまな疾患の重症度などに関連することも判明しつつあります。たとえば、「B型の人は主流なノロウイルス株への耐性を持つ」ということがわかっているほか、「O型の人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染率や重症率が低く、AB型はリスクが高い」という調査結果も報告されています。


新たな研究では、48件の異なる遺伝学的研究で収集された1万6730例の脳卒中患者および59万9237例の非脳卒中患者のデータを用いて、血液型と脳卒中の発症リスクについて分析しました。今回の研究ではゲノム全体について疾患との関連を解析するゲノムワイド関連解析を用いて、18歳~59歳の「early onset stroke(EOS/早期発症脳卒中)」と血液型との関連を調べたとのこと。

解析の結果、早期発症脳卒中のリスクと強く関連する2つの遺伝子領域のうち1つは、血液型を決定する遺伝子と一致したと研究チームは報告しています。また、早期発症脳卒中の患者は血液型がA型である可能性が高く、O型である可能性が低いことも判明しました。性別やその他のリスク要因を調整した後でも、A型の人はその他の血液型の人より脳卒中の発症リスクが16%も高く、O型の人は発症リスクが12%も低かったとのことです。


さらに、60歳以上の脳卒中患者および非脳卒中患者のデータを併せて分析したところ、A型の人における脳卒中リスク増加は60歳以上の「late onset stroke(LOS/後期発症脳卒中)」では軽微になることが判明。この結果から、59歳以下で発生する早期発症脳卒中と60歳以上の後期発症脳卒中では、異なる発症メカニズムが存在する可能性があると示唆されました。研究チームはこの点について、若い人では動脈の脂肪蓄積が脳卒中を引き起こす可能性が低く、代わりに血栓形成に関する要因が脳卒中の引き金になる可能性が高いと指摘しています。

なお、血液型がB型の人は、年齢に関係なく脳卒中を発症するリスクが約11%高かったとのことです。


研究チームは、血液型による脳卒中リスクの増加は小さいため、A型だからといって追加のスクリーニング検査や特別な警戒が必要なわけではないと主張。論文の共同上級著者であるメリーランド大学医学部のSteven J. Kittner博士は、「なぜA型だと早期発症脳卒中のリスクが高くなるのかはまだ明らかになっていませんが、血栓の形成に関与する血小板や血管の細胞といった血液凝固因子や、循環しているタンパク質が関係している可能性が高いと思われます。脳卒中リスクが上昇するメカニズムを明らかにするため、さらなる追跡調査が必要であることは明白です」と述べました。

なお、今回の研究データは北米・ヨーロッパ・日本・パキスタン・オーストラリアに住む人々から収集されており、非ヨーロッパ系の人々が占める割合は35%だったとのこと。そのため科学系メディアのScience Alertは、より多様な人口統計に基づいたサンプルを用いた研究を行うことで、結果の重要性がさらに明らかになると主張しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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