サイエンス

新型コロナによる死亡リスクが2倍になる遺伝子を特定したという研究結果


イギリス・オックスフォード大学の研究チームが「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡リスクを2倍にする可能性のある遺伝子」を特定したと発表しました。

Identification of LZTFL1 as a candidate effector gene at a COVID-19 risk locus | Nature Genetics
https://www.nature.com/articles/s41588-021-00955-3

Scientists Find Gene That Doubles Risk of Dying From Covid-19 - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-11-04/scientists-find-gene-that-doubles-risk-of-dying-from-covid-19

Study into gene that affects Covid severity should be treated with caution | Genetics | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2021/nov/04/human-genetic-variant-can-affect-covid-severity-say-oxford-scientists

発表によると、COVID-19の死亡リスクを倍増させる可能性があるのは、「LZTFL1」という遺伝子。LZTFL1の作用メカニズムについては完全に解明されていないそうですが、研究チームによると、新型コロナウイルスの感染時には肺や気道を覆う上皮細胞細胞の表面にあるウイルス受容体「ACE2」が減少するという防御機構があり、この防御機能がLZTFL1が低リスク型である場合は正常に働く一方、LZTFL1が高リスク型である場合は何らかの要因で妨げられて機能しない可能性が高いとのこと。

高リスク型のLZTFL1を有するのは、南アジアを祖先とする人々の場合は60%に達しますが、ヨーロッパを祖先とする白人の場合は15%、アフリカ系やカリブ系の黒人の場合はわずか2%にとどまるそうで、研究チームは「一部の人種グループや南アジアで感染が特に多いことを説明する手がかりになり得ると主張。ただし、感染第1波の際には黒人の感染が特に多かった点に触れて、職業・基礎疾患・居住地などの要因も大きく作用しており、遺伝子のみが感染率を左右しうるわけではないと断っています。


研究チームは、「LZTFL1は新型コロナウイルスの「感染」に関与する要因であって、免疫系とは無関係」として、高リスク型の人々にとってワクチン接種は特に効果が大きいと主張。「高リスク型の人がCovidで非常に具合が悪くなったケースを考えた場合、その人が、低リスク型ならば、そうした事態に陥らなかった可能性が50%もあります」とコメントしました。

一方、イギリス大手紙のThe Guardianは「社会経済的な要因を考慮してもイギリス国内におけるインド・バングラデシュ・パキスタン出身者の感染リスクが50%高いという結果が得られており、この格差の原因が遺伝子にあるという説明はもっともらしく思える」と前置きした上で、今回の研究に用いられた人種ごとの遺伝子データには85%がヨーロッパ系という偏りがある点を指摘。妥当な結論を導き出すためには、より人種の偏りがないデータベースが用いられることが望ましいと述べました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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