広い範囲の電子機器を対象とした「修理する権利」を認める法案をニューヨーク州議会がアメリカで初めて可決
アメリカのニューヨーク州議会は2022年6月4日、アメリカ初である広い範囲の電子機器を対象にした「修理する権利」を定める法案を賛成145:反対1で可決しました。この法案はキャシー・ホークル知事の署名により成立し、署名から1年後に施行される予定です。
NY State Senate Bill S4104A
https://www.nysenate.gov/legislation/bills/2021/S4104
New York state passes first-ever ‘right to repair’ law for electronics - The Verge
https://www.theverge.com/2022/6/3/23153504/right-to-repair-new-york-state-law-ifixit-repairability-diy
New York lawmakers approve first right-to-repair law bill • The Register
https://www.theregister.com/2022/06/03/new_york_repair/
New York Passes World’s First Electronics Right to Repair Law | iFixit News
https://www.ifixit.com/News/60893/new-york-passes-worlds-first-electronics-right-to-repair-law
New York state passes first electronics right-to-repair bill | Ars Technica
https://arstechnica.com/gadgets/2022/06/ny-passes-right-to-repair-will-require-tech-oems-to-share-tools-diagnostic-info/
「修理する権利」はPCやスマートフォン、自動車といった製品を購入したユーザーが、メーカーの修理サービスを通さずに自分自身で修理する権利のことです。電子機器や自動車などの分野では長年にわたり、メーカーや特定の修理業者のみが製品を修理できることとなっていましたが、この仕組みは「メーカーが修理から独占的な利益を得ている」「製品の使い捨てを助長する」といった非難の対象となっていました。
そこで近年では、修理する権利を訴える活動が世界的に活発化しています。アメリカではジョー・バイデン大統領の指示により連邦通信委員会(FTC)が「修理する権利を制限するメーカーの慣行に対する法的措置を強化する」との政策声明を発表しているほか、Appleは2022年4月からユーザーが自分でiPhoneを修理できる「セルフサービス修理プログラム」を開始しています。
そんな中、アメリカ初となる「電子機器を広く対象とした修理する権利」を定める法律が、6月1日にニューヨーク州議会上院を賛成49:反対14で通過し、3日に州議会下院を賛成145:反対1で通過しました。この法案は州内で「デジタル電子製品」を販売するすべてのメーカーに対し、消費者と独立系店舗の両方が修理工具・部品・修理マニュアルを利用可能にすることを義務づけるもの。ホークル知事が法案に署名すると正式に法律となり、1年後の2023年半ば頃から施行される予定です。
修理器具などの販売を手がけるiFixitはさっそく法案可決に反応し、この法案は独立系修理工場がメーカーの修理サービスと競争することを可能にするほか、自分の手でデバイスを修理したい消費者自身にも恩恵があると述べています。また、ニューヨーク州で修理工具・部品・修理マニュアルの提供が義務づけられることで、その他の州でも同様に修理マニュアルなどが入手可能になる可能性が高いと主張しました。
今回の法案では、家電製品や医療機器、自動車、農業機械などが修理する権利を認める電子機器に含まれていないほか、警察官用の無線機など公共安全目的の通信機器も除外されています。しかし、過去にアメリカで可決された同様の法案は範囲が限定的であり、広い範囲の電子機器をカバーした今回の法案は大きな意味を持つとのこと。
非営利団体・US Public Interest Research Groupで修理する権利のキャンペーンディレクターを務めるNathan Proctor氏は、メーカーの反対により多くの州で修理する権利の法律制定が進まないとして、「ニューヨーク州は携帯電話などの一般消費者向け機器を対象とした法律を制定した初めての州です」とコメント。今後は農家のトラクターや家電製品なども修理できるようにするため、さらなる活動を進めていくと述べました。
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