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自分で自分の車を修理できる「修理権」の新法がアメリカで成立、一体何が革新的なのか?


アメリカ・マサチューセッツ州で2020年11月3日に、消費者が自分の自動車を自分で修理する権利を規定した「2020年マサチューセッツ州修理権イニシアチブ」、通称「修理権法」の成否を問う住民投票が実施され、賛成が有効票の74.9%を占める賛成多数で可決しました。2012年に同州で制定された同様の法律の範囲を拡大する今回の法案の成立について、複数のメディアが「重要な投票だった」と報じています。

Massachusetts passes ‘right to repair’ law to open up car data - The Verge
https://www.theverge.com/2020/11/4/21549129/massachusetts-right-to-repair-question-1-wireless-car-data-passes

Massachusetts Just Passed the World’s Most Advanced Right to Repair Law - iFixit
https://www.ifixit.com/News/46235/massachusetts-just-passed-the-worlds-most-advanced-right-to-repair-law

Massachusetts Voters Overwhelmingly Pass Car Right-to-Repair Ballot Initiative
https://www.vice.com/en/article/bvxxq3/massachusetts-voters-overwhelmingly-pass-car-right-to-repair-ballot-initiative

Massachusetts Voters Score Huge Car Tech Win With Expansion Of Right-To-Repair Law | HotHardware
https://hothardware.com/news/massachusetts-voters-diy-smart-car-right-repair-law


マサチューセッツ州で2012年に制定された「修理権法」とは、「メーカーやディーラーが保有するものと同様の修理情報やツールを、自動車の所有者や独立系の自動車修理店に提供すること」を自動車メーカーに義務づけた法律です。この法律により、自動車の所有者は、メーカーやメーカー指定のディーラーに頼ることなく、自分自身の手や自分で選んだ修理店で車を修理することができるようになりました。

しかし、2012年の修理権法は、当時あまり普及していなかったハイテクな自動車をカバーしていないという抜け穴が存在していました。そのため、高度なハイテク技術やコンピューターを搭載したスマートカーが普及するに伴い、こうした車が「診断情報やテレマティクスのデータを直接メーカーに送信してしまうせいで、オーナーや修理店が自動車を修理できない」という問題が表面化するようになりました。


そこで、修理権の推進を目指す団体である修理連合をはじめとする消費者団体は、データの公開を自動車メーカーに要求してきましたが、メーカー側は「セキュリティリスクが高まる」として聞き入れませんでした。しかし、セキュリティ専門家らは「診断データや修理データをオープンにしても、ガレージのシャッターを無断で開けられたり、サイバーストーカーに車を追跡されたりするようなことはありません」との意見を発表し、消費者団体を支持する姿勢を取っています。

そんな中で実施された11月3日のマサチューセッツ州住民投票では、「車の所有者が、車両の運転によって生成されたデータにアクセスし、独立した修理店と共有することができるようにすべきかどうか」を問う修理権法の改正案、通称「Question 1(質問1)」が発議され、賛成248万1625票・反対83万1415票の賛成多数で可決されました。これにより、2022年以降にマサチューセッツ州で販売されるテレマティクス対応車は、標準化されたオープンアクセスのデータプラットフォームを装備することが義務づけられるようになります。


電子機器の修理情報などを手がけるiFixitのCEOであるKyle Wiens氏は、住民投票の結果について「現行の自動車は、メンテナンスに関する情報を直接メーカーに送ることで、地元の整備士を排除してきました。新たな修理権法により、消費者は自分の車を自分で修理することも、自分の好きな修理店で修理してもらうこともできるようになります」とコメントしました。

また、IT系ニュースサイトThe Vergeは「質問1の可決により、自動車のオーナーはスマートフォンアプリで自動車のテレマティクスにアクセスできるようになるでしょう。また、マサチューセッツ州の法律は州独自のものですが、企業がこれを順守することで全国的な基準を効果的に推進することができます」と述べて、マサチューセッツ州以外の地域への波及に対する期待感を示しました。

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in 乗り物, Posted by log1l_ks

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