サイエンス

PTSDの症状を軽減することが認知機能の改善と関連しているとの研究結果


心的外傷後ストレス障害(PTSD)は命が脅かされるような出来事やけが、性的暴力などを経験または目撃した後に発症する精神疾患です。そんなPTSDを治療して症状が軽減することが、認知機能の改善と関連しているとの研究結果が報告されました。

Cognition improvement in U.S. veterans undergoing treatment for posttraumatic stress disorder: Secondary analyses from a randomized controlled trial - Mamat - Journal of Traumatic Stress - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jts.70033


Reduction in PTSD symptoms linked to better cognitive performance in new study of veterans
https://www.psypost.org/reduction-in-ptsd-symptoms-linked-to-better-cognitive-performance-in-new-study-of-veterans/

PTSDを引き起こす要因には戦争や戦闘、身体的または性的な暴行、深刻な事故や自然災害、愛する人との死別などが挙げられます。PTSDは退役軍人や救急隊員、難民、暴力の被害者などに多くみられますが、トラウマを経験した人なら誰でも発症する可能性があります。


症状としてはトラウマ的な記憶のフラッシュバックや悪夢、トラウマを想起させる物事への回避傾向、気分や信念のネガティブな変化、過敏性や過覚醒といったものがあります。これらの症状は1カ月以上にわたって持続し、深刻な苦痛や日常生活への支障をもたらします。

スタンフォード大学医学部の博士研究員であるズルカイダ・ママト氏らの研究チームは、PTSDを発症したアメリカ退役軍人の認知機能の変化を調べました。研究チームは、PTSD患者で障害がみられる注意力やワーキングメモリ、エピソード記憶、情報処理速度実行機能といった認知領域について、PTSDの治療および症状の改善に伴って機能が向上するという仮説を立てて実験を行いました。


実験には臨床的に有意なPTSD症状を持つアメリカ退役軍人85人が参加し、このうち62人がPTSDの治療セッションと、治療前後の認知機能評価を完了しました。被験者はPTSDの治療法として知られる認知処理療法(CPT)か、呼吸法に基づくヨガ(スダルシャン・クリヤ・ヨガ)のグループに無作為で割り当てられました。

認知処理療法はPTSDに対する体系的かつエビデンスに基づいた治療法であり、トラウマに関連する有害な信念を特定・修正することで、苦痛の軽減と生活の質の向上を目指します。一方のスダルシャン・クリヤ・ヨガは特定の呼吸法を用いてストレスを軽減し、感情をコントロールすることで精神的な健康をサポートします。

認知処理療法に割り当てられたグループは1時間ずつのセッションを週2回、6週間にわたって合計12時間受けました。一方、ヨガに割り当てられたグループは最初に1日3時間のワークショップを5日間受け、その後は週2回のグループセッションを6週間にわたって実施して、合計約40時間の治療を受けました。治療セッション終了時点の被験者の年齢は、認知処理療法に割り当てられたグループで平均58歳、ヨガに割り当てられたグループで平均61歳だったとのこと。

治療セッションの前後に、被験者らはPTSDの重症度やうつ病の尺度、認知機能についての評価を受けました。認知機能評価ではエピソード視覚の記憶および学習、視覚・運動・理解力、持続的な視覚注意力、ワーキングメモリ、戦略の使用といった項目について評価が行われました。


実験の結果、両グループの被験者の認知機能が治療セッション後に改善を示しました。具体的にはエピソード視覚の記憶力や、視覚・運動・理解力、持続的な視覚注意力において中程度の改善がみられました。一方、空間ワーキングメモリのパフォーマンスは両グループともに低下しました。

認知機能改善の程度は両グループとも同程度であり、全体的な認知機能の改善はPTSD症状の軽減と関連していることも示されました。しかし、より詳細な分析では「認知機能の改善とPTSD症状の軽減の関連性」が統計的に有意だったのは認知処理療法のグループだけで、ヨガのグループでは有意な関連性がなかったと報告されています。

研究チームは、「治療の種類に関わらず、PTSD症状の軽減とともに認知機能も改善しました。これらの知見は、PTSDの治療がPTSD症状を緩和するだけでなく、関連する認知機能も改善する可能性があることを示す証拠となります」と結論付けました。

なお、心理学系メディアのPsyPostは今回の研究について、「治療を受けなかったPTSD患者」のグループがいなかった点を指摘。そのため、2つのグループでみられたPTSD症状の軽減や認知機能の改善が治療によるものなのか、それとも時間経過によるものなのかは不明だと主張しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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