サイエンス

トラウマに苦しむ人の遺伝子にはある異変が発生している

by Anemone123

心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは、トラウマ(心的外傷)が原因でその後フラッシュバックなどの症状に苦しむストレス障害です。最近の研究により、PTSDに苦しむ人の遺伝子の発現にはある変異が見られることが明らかになりました。

Gene expression differences in PTSD are uniquely related to the intrusion symptom cluster: A transcriptome-wide analysis in military service members - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0889159119301540

Study provides new insights into the relationship between PTSD, genetics and inflammation
https://www.psypost.org/2019/06/study-provides-new-insights-into-the-relationship-between-ptsd-genetics-and-inflammation-53932

Childhood trauma can change the way your genes behave and leave you more vulnerable to illness | Popular Science
https://www.popsci.com/childhood-trauma-epigenetic/

PTSDの患者には特定の遺伝子の発現性に変異があることを突き止めたのは、アメリカの国立看護研究所に務めるヘザー・ラッシュ氏らの研究グループです。

研究グループは、39名のPTSD患者と27名の非PTSD患者に対し精神医学的な検査と血液検査を実施し、PTSDと遺伝子の振る舞いとの関連性を調査しました。その結果、PTSDによりフラッシュバックや悪夢などの症状を持つ人は98%もの確率で免疫反応に関する遺伝子の発現性が増加していたとのこと。また、PTSD患者はそうでない人に比べて、炎症関連バイオマーカーが多いことも分かっています。

by samer daboul

ラッシュ氏は心理学および神経科学を扱う海外メディアPsyPostの取材に対し、「身の危険を感じさせるような脅威に対抗するため、免疫反応が高まるという今回の調査結果は、進化論的観点から見ても理にかなっています」回答しています。

免疫反応が強化されると病気にかかりにくくなるようにも思えますが、これには重大な副作用があることも分かっています。ストレス反応ホルモンとも呼ばれるコルチゾールに注目した研究では、ストレスによりコルチゾール濃度が高い状態が続くことで、将来的にうつ病などの精神障害のリスクが増大したと報告されています。

by bialasiewicz

また別の研究では、マウスが若年期にストレスにさらされると、脳細胞の成長を促進する脳由来神経栄養因子(BDNF)を生成する遺伝子の活性が低下することも明らかになっています。

ラッシュ氏は「PTSDはほかの精神的・肉体的な障害や病気と共通する症状を多く持っているため、誤診が多く発生しています」と指摘し、今回の研究の進展により遺伝子検査でPTSD患者を特定し、最適な治療を行うことができるようになるとの期待を述べていました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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