サイエンス

パンデミックは人々の性格をどのように変えてしまったのか?


人間の性格は必ずしも生まれてから死ぬまで同じというわけではなく、年齢雇用不安生活スタイル経済状況などのさまざまな要因が性格に影響を及ぼすことが知られています。フロリダ州立大学の研究チームが行った調査では、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック前と後で人々の性格が変わった」という結果が示されました。

Differential personality change earlier and later in the coronavirus pandemic in a longitudinal sample of adults in the United States | PLOS ONE
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0274542

Has the pandemic changed our personalities? New research suggests we're less open, agreeable and conscientious
https://theconversation.com/has-the-pandemic-changed-our-personalities-new-research-suggests-were-less-open-agreeable-and-conscientious-191308

COVID-19のパンデミックは社会や人々の日常に大きな変化をもたらしており、多くの研究者が「パンデミックが人々のメンタルヘルスや行動に及ぼした影響」について研究してきました。パンデミックによって多くの人々がメンタルヘルスの不調に苦しんだ一方で、若者の3分の1が都市封鎖(ロックダウン)の間にメンタルヘルスと幸福度が改善したと報告していたことや、パンデミック中は慈善団体への寄付額が増えたといった結果が明らかになっています。

フロリダ州立大学の研究チームは、パンデミックがより基本的な性格に影響を及ぼした可能性について調べるため、南カリフォルニア大学が実施したUnderstanding America Study(UAS)というオンライン調査のデータを使用しました。UASはオンラインで被験者の性格テストを縦断的に行ったものであり、研究チームはパンデミック前の2014年~2020年2月、パンデミック初期の2020年2月以降、そして2021年または2022年にテストに回答した7000人以上のデータを使用しました。被験者はいずれもアメリカ在住であり、年齢は18~109歳と非常に幅広かったとのこと。

性格テストはビッグファイブ性格特性に基づいて被験者の性格を測定するものでした。ビッグファイブ性格特性とは、人間の性格と精神を記述するために一般的に用いられる「外向性」「協調性」「誠実性」「神経症的傾向」「開放性」という5つのスケールで性格を分類する方法です。


データを分析した結果、パンデミック前とパンデミック初期の2020年における性格特性にはあまり差がみられませんでした。ところが、パンデミック前とパンデミック後の2021年~2022年の性格を比較したところ、パンデミック後は外向性・開放性・協調性・誠実性が大幅に低下していることが判明しました。

もともと人々の外向性・開放性・協調性・誠実性は低下する傾向にあったとのことですが、2021年~2022年は通常の低下傾向を超えていたことから、パンデミックのトラウマが人格変化の自然なプロセスを加速させた可能性が示唆されています。

また、性格の変化は特に若年層において大きく、2021年~2022年に協調性と誠実性の著しい低下と神経症的傾向の増加がみられたことも研究チームは指摘しています。この結果は、約2年間にわたりこれまでとは違う生活を強いられた後に社会復帰することへの不安が一因かもしれないとのこと。


パンデミックの間、人々は食事や運動といった生活習慣の改善に取り組んだり、余暇を大切にするようになったりしましたが、それにもかかわらず人々のメンタルヘルスや幸福度が大幅に悪化したという研究結果が報告されています。

この点についてアイルランド王立外科医学院のポジティブ心理学健康センターで上級講師を務めるJolanta Burke氏は、「特に性格は私たちの幸福に大きく影響します。たとえば、高レベルの誠実性・協調性・開放性を持っている人は、最も高いレベルの幸福を経験する可能性が高くなります」と述べ、性格の変化が人々のメンタルヘルスや幸福度に悪影響を及ぼしたかもしれないと示唆しています。

Burke氏は、協調性・開放性・外向性・誠実性といった特性はいずれも周囲との相互作用に影響を及ぼし、これらの性質が低下したことで幸福の低下が進んだ可能性があると指摘。パンデミックの間における性格の変化を調べた今回の研究結果は、パンデミックが精神に及ぼす影響に関する重要な洞察を提供するものだと主張しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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