アメリカでついに「進化論肯定派」が過半数を突破したという研究結果
生物は不変のものではなく長期間かけて次第に変化するという「進化論」は日本では当たり前のように受け入れられている学説ですが、人間は神によって作られたとする「創造論」に基づく宗教が主流な地域では学校教育の場で扱われないケースもあります。創造論に基づくキリスト教が圧倒的多数派を占めるアメリカではこれまで進化論否定派が多数派を占めていましたが、新たな研究で進化論肯定派が多数派となったことが明らかになりました。
Public acceptance of evolution in the United States, 1985–2020 - Jon D. Miller, Eugenie C. Scott, Mark S. Ackerman, Belén Laspra, Glenn Branch, Carmelo Polino, Jordan S. Huffaker, 2021
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/09636625211035919
Study: Evolution now accepted by majority of Americans | University of Michigan News
https://news.umich.edu/study-evolution-now-accepted-by-majority-of-americans/
進化論はあらゆる生物は進化によって今の姿形に至ったという学説ですが、「神はご自分にかたどって人を創造された。神にかたどって創造された。男と女に創造された」という一節のある創世記を教典に含むユダヤ教・キリスト教・イスラム教などとは相性が悪く、人口の99%以上がイスラム教徒というトルコで2005年に行われた調査では、進化論肯定派は27%にとどまっています。
アメリカは、動力飛行機(ライト兄弟)や電信・電話(グラハム・ベル)、白熱電球・蓄音機(トーマス・エジソン)、マンハッタン計画、宇宙開発技術(NASA)など数々の科学技術を世に送り出した「科学技術超大国」といえる国ですが、国内における科学教育においては宗教的派閥からの根強い反発があり、「進化論を教えない」というケースすらありました。こうした進化論教育については、アメリカ法曹界の伝説的人物であるクラレンス・ダロウが担当した1925年のスコープス裁判(モンキー裁判)や1982年のアーカンソー州授業時間均等法裁判などで再三争われましたが、2018年には進化論否定派の介入活性化によって、アリゾナ州が教科書から進化論に関する記述を抹消するという動きが報じられています。
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進化論に対する否定的な動きが目立って報じられるアメリカですが、ミシガン大学社会調査研究所のジョン・D・ミラー氏が行った全国世論調査の分析によって、進化論肯定派が過半数を突破したことが明らかになりました。同氏の分析によると、進化論肯定派が過半数を突破したのは2016年のことで、2009年から2019年にかけて進化論肯定派に属する成人のアメリカ人の割合は40%から54%に上昇したとのこと。
今回の分析では、アメリカの中で「進化論を認める宗教的原理主義者」の割合が増加しつつあることも明らかになっています。アメリカにおいて自身を宗教的原理主義者だと考える人の割合は30%前後をキープし続けていますが、宗教的原理主義者であるにもかかわらず「進化論を認める」という立場の人は1988年の8%から2019年の32%に急上昇を見せているとのこと。
ミラー氏によると、進化論肯定派が増加した背景には、市民の科学リテラシー向上・大学の科学コースの受講率増・大学の学位取得率増などの「教育の成功」があるとのこと。アメリカにおける大学学位取得率は1988年から2018年にかけておよそ2倍となっており、ミラー氏は「科学の成功に対する最小限の敬意すらない人にとって、大学の学位を取得するというのは困難です」と述べ、科学に関する教育こそが進化論を広める原動力になっていると指摘しています。
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