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AppleはなぜApple Watchなどのウェアラブルデバイスで世界をリードしているのか?


Appleが開発・販売するスマートウォッチであるApple Watchは、長年にわたってスマートウォッチ市場におけるシェア1位の座をキープし続けています。Appleについての分析を行うメディアAbove Avalonの創設者であるNeil Cybart氏は、「Appleはウェアラブルデバイスの分野で競合他社より10年先を行っている」として、Appleがウェアラブルデバイス分野で競合他社をリードする理由について分析しています。

Above Avalon: Apple Has a Decade-long Lead in Wearables
https://www.aboveavalon.com/notes/2021/5/27/apple-has-a-decade-long-lead-in-wearables

2021年3月、Facebookが「手の動きだけで制御できるリストバンド式のデバイス」を開発中だと発表し、プロトタイプのムービーを公開しました。この発表はセンセーショナルでしたが、製品自体は開発の初期段階であり、一般販売される時期などの予測は困難だとFacebookのCTOを務めるMike Schroepfer氏は述べました。

Facebookが手の動きだけでコンピューターを制御可能にする腕時計型デバイスを開発中&ムービーを公開 - GIGAZINE


ところが、AppleはFacebookの発表があった直後の5月に、新たな「AssistiveTouch」というアクセシビリティ機能をApple Watchに追加すると発表しました。watchOS版のAssistiveTouchでは、Apple Watchのディスプレイやサイドボタンに触れることなく、拳を握ったり指を曲げたりするジェスチャーで端末の操作が可能になります。この事例は、ウェアラブルデバイス分野においてAppleが競合他社のFacebookを大幅にリードしていることを示唆しています。

AppleがApple Watchのディスプレイに触れることなく操作可能になる「AssistiveTouch」機能など強力なアクセシビリティ機能を発表 - GIGAZINE


Cybart氏は、Appleが2021年に出荷するウェアラブルデバイスは1億台を超えるだろうと予測しており、Apple WatchやAirPodsなどを含めたウェアラブルデバイスはAppleにとって大きな収益の柱となっています。記事作成時点ではAppleのウェアラブルデバイス部門は年間300億ドル(約3兆3000億円)ほどの収益を上げていますが、今後数年以内に500億ドル(約5兆5000億円)まで成長する可能性があるとのこと。

また、Cybart氏は「カスタムシリコンチップやテクノロジー、センサーといった技術」「ユーザーエクスペリエンスを重視するデザイン手動の開発プロセス」「複数のウェアラブルデバイスにまたがる広範なエコシステム」といった3つの要素から、ウェアラブルデバイス分野においてAppleが競合他社を10年以上リードしていると主張しています。

Appleは積極的なM&A戦略によって必要なテクノロジーや人材を手に入れることにも優れており、2015年以降だけで拡張現実スタートアップの「Metaio」、視標追跡技術を開発する「SensoMotoric Instruments」、ARヘッドセット開発の「Vrvana」、ARグラス向けレンズ開発のスタートアップ「Akonia Holographics」、VRコンテンツ企業の「NextVR」、VRスタートアップの「Spaces」などの買収を進めてきました。すでにウェアラブルデバイスの開発は2~3年の期間で完結するものではなくなっており、Appleはより長期的なリードタイムでの開発を見据えているとのこと。


「なぜAppleがウェアラブルデバイス分野で競合他社を大きくリードできたのか?」という疑問について、Cybart氏は以下の5つの理由を挙げています。

◆1:参入するのが早かった
競合他社をリードする最もシンプルな方法の1つが「誰よりも早く参入する」ことです。テクノロジーをより個人的なものにするウェアラブルデバイスは、Appleが長年にわたり取り組んできた使命と合致しているとのことで、Cybart氏は「ある意味で、Appleはウェアラブルデバイスでうまく機能するように設計されています」と述べています。Apple Watchが発表されたのは2013年のことでしたが、2010年に発表された第6世代iPod nanoは腕時計としての利用も可能であり、実質的にApple Watchの前身とも言えます。

◆2:競合他社が音声コンピューティングを追求した
Appleがウェアラブルデバイスに注力する戦略を明確にした後も、競合他社がウェアラブルデバイスの分野へ参入するには時間が空きました。その理由の1つには、「大きなパラダイムシフトが起きるのは音声コンピューティングの分野だ」と競合他社が考えていた背景があるとCybart氏は指摘。多くの競合他社はウェアラブルデバイスの専門知識に乏しかったため、固定されたスピーカーを通じた音声アシスタントなどに注力しましたが、結果としてこの判断がAppleにリードを許すことになったとのこと。


◆3:ウェアラブルデバイスの設計には専門知識が必要である
ウェアラブルデバイスは単にスマートフォンの部品をつなぎ合わせるだけでは不十分であり、ユーザーはデバイスとしての見た目が洗練されたものを身に着けたいと考えています。多くの企業はこうしたデバイスをデザインすることに苦心していますが、Apple Watchは競合他社よりも優れたデザインを実現しています。

◆4:エコシステムとテクノロジーの優位性
ウェアラブルデバイスにおいてはサービスや機能のエコシステムが重要であり、Appleはモバイルデバイスの経験をウェアラブルデバイスに生かし、AppleのエコシステムにApple Watchを組み込むことができました。これと同じことができる競合他社は多くないため、この点もAppleが競合他社をリードする要因になっているとのこと。

◆5:価格面での差が小さい
Androidがスマートフォン分野でAppleと競合できた理由は、iPhoneよりも下の幅広い価格帯が残されていたことに加え、iOSにない機能をAndroidで提供することも可能だったためです。ところがAirPodsやApple Watchは、iPhoneと比較すると全体的に安価であり、競合他社が価格面で競争する余地が小さいとCybart氏は述べました。

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in ハードウェア, Posted by log1h_ik

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