サイエンス

「うつ病」と「炎症」の関連が8万6000人を対象とした過去最大規模の研究で発見される


うつ病は心や精神が原因になって発生するため身体的な変化で見分けることが困難ですが、ストレスホルモンの量を耳あかから計測したり、うつ病により脳が変質するとされることから画像の見え方ユーモアの傾向で判定したりと、症状を早期発見するための研究が行われています。2021年5月に報告された過去最大規模の研究では、うつ病のリスクが高いほど、体に表れる「炎症」のレベルが高くなることが示されています。

Psychiatry Online
https://ajp.psychiatryonline.org/doi/10.1176/appi.ajp.2020.20060947

Huge Study Finds Inflammation Could Be a Core Feature of Depression
https://www.sciencealert.com/huge-study-finds-inflammation-could-be-a-core-feature-of-depression

うつ病は心因性の症状ですが、その影響は広く肉体に波及し、脳の一部が変質すると知られているほか、細胞の老化を加速させるという研究結果も発表されています。

うつ病が「細胞の老化を加速させる」という報告 - GIGAZINE


そのような症状の研究として、イギリスで約8万6000人を対象にした過去最大級の調査が行われた結果、うつ病の人が炎症系の活性化を示すタンパク質を血中に持っていることが報告されましたキングス・カレッジ・ロンドンの心理学者であるマリア・ピサロウリ教授は、「8万6000人のデータを詳細に分析することで、炎症とうつ病の関係の背後にある可能性のあるメカニズムについても発見しました」と述べています。

この研究では、血中のC反応性タンパク質(CRP)と呼ばれる炎症バイオマーカーを測定しました。結果として、大うつ病性障害を過去に経験したことがあると報告した個人の約31%で、そうでない人と比較してより高いレベルのCRPが発見されました。


また、遺伝学の観点から、うつ病と炎症との遺伝的関連も調査が行われました。キングス・カレッジ・ロンドンの遺伝学者であるキャスリン・ルイス教授は、「調査の結果、うつ病の炎症への遺伝的影響は主に食事と喫煙の習慣に起因することが示されました。この発見はうつ病を理解するために重要であり、うつ病の治療法を改善するためにも役立ちます」と語っています。

今後の研究では、うつ病と炎症が同時に存在するとして、それらの関連を明確にすることが重要です。まだ発見されてない何かが両方の症状を引き起こしている場合、うつ病の治療の的を絞ることが可能になり、治療が大きく改善します。

しかしながら、今回の研究には参加していないキングス・カレッジ・ロンドンの遺伝学者であるデイヴィッド・カーティス教授は、「うつ病と炎症を含む身体的な病気が互いに関連することは過去の研究でも知られており、今回の研究は目新しいものではありません。炎症がうつ病を引き起こすのに重要な役割と果たしているかは疑わしいといえます」と懐疑的な意見も述べています。カーティス教授は、この研究によってリスクの高い「抗炎症薬」がうつ病治療に用いられることの危険性を強調し、安全で効果的な抗うつ薬を使い続けることを推奨しています。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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