うつ病が「細胞の老化を加速させる」という報告
うつ病の中でも抑うつ状態だけが生じる大うつ病性障害を患った場合、「細胞の老化が2年進む」という研究結果が発表されました。
“GrimAge,” an epigenetic predictor of mortality, is accelerated in major depressive disorder | Translational Psychiatry
https://www.nature.com/articles/s41398-021-01302-0
Cells age prematurely in those with depression, study suggests | Live Science
https://www.livescience.com/depression-may-accelerate-cell-aging.html
大うつ病性障害は、心血管疾患、アルツハイマー病、骨粗鬆症などのさまざまな老化関連疾患や早期死亡率のリスクを高めることが以前から知られています。一連の研究結果を受け、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のエカテリーナ・プロツェンコ氏率いる研究チームは「大うつ病性障害が体内の生物学的プロセスを促進し、老化自体を早めている」という仮説を立て、検証実験を行いました。
「老化自体を早めている」ということを立証するための年齢測定の手法として、研究チームはDNAの化学的変化から生物学的な年齢を算出する「エピジェネティック・クロック」を採用。エピジェネティック・クロックは、DNAメチル化と呼ばれる、加齢によって進行する「DNA内の特定原子がメチル基に置き換わる」というプロセスの度合いから、正確な年齢を算出します。
研究チームは薬物治療を受けていない大うつ病性障害患者49人と同年齢の健康な男女60人の血液サンプルを比較。性別、喫煙状況、BMI指数などを考慮に入れた上で比較を行ったところ、大うつ病性障害患者は肉体的には老化の兆候がみられない一方、細胞的には「中央値でおよそ2年」という老化がみられました。
以下が「Grim Age」と呼ばれるDNAメチル化のパターンから算出された細胞年齢から実年齢を引いた数値をプロットした1次元散布図。Healthy Controls(健康な対照群)に比べて、MDD(大うつ病性障害患者)のAge Accel Grim(細胞年齢マイナス実年齢の値)が高いことが示されています。
Y軸側をGrim Age(細胞年齢)、X軸側をChronological age(実年齢)としてグラフ化したものが以下。HC(健康な対照群)に比べ、MDD(大うつ病性障害患者)はGrim Ageの値が高めなことがわかります。これは、「実年齢に対し、細胞年齢が進行している」ことを意味しています。
研究チームは、「今回の研究により、うつ病を理解するためには、うつ病を『脳内のプロセスに限定される純粋な意味での精神疾患』ではなく、『全身疾患』と捉えるべきだと判明しました」と主張。その一方で、「『うつ病がDNAメチル化を誘発する』のか、『何か根本的な要因が別にあって、その要因がうつ病とメチル化の両方を誘発する』のかは定かではありません」とコメントしています。
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