医療方針のパラダイムシフト「加齢を遅らせて病気をおこさせない」という方法論

By Vanessa Kay

Google社が健康と人間の幸福を改善する目的で新しい会社「Calico」の設立を発表しましたが、それに呼応するかのように、今後の医療政策を大きく転換させるかもしれない調査結果が公表されました。そこでは現在の医療に見られるような、病気ごとに個別に行われている研究や治療ではなく、より根本的なところで人間の加齢による老化を遅らせて、人々の健康状態を良好に保つ施策を採るほうがメリットをもたらすとしています。

Delayed aging is better investment than cancer, heart disease
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/10/131007162357.htm


この発表は、アメリカの健康関連のジャーナル誌である「Health Affairs」誌に掲載されたものです。同誌は、米ワシントン・ポスト紙から「健康政策のバイブル」とも呼ばれており、大きな影響力を持っているといわれています。

加齢による老化の速度を遅らせることができると、65歳以上の健康な人の割合が2030年から2060年の30年間にわたって少なくとも毎年5パーセントずつ増加し、2060年には健康なお年寄りの数が1170万人増加するという試算が出ています。また、健康な人の割合が増加することで医療費を1.25パーセント削減できると見込んでおり、長期的に見れば大きな恩恵を受けることができるとしています。

◆増加する老齢人口と医療問題
今後の50年間で、アメリカ国内の老齢人口は現在の4300万人から1億600万人と2倍以上になることが予想されています。そして、そのうち約28パーセントの人が健康に問題を抱えるといわれています。医療政策・経済学を研究する南カリフォルニア大学・Schaeffer Centerの所長で報告書の筆頭著者でもあるDana Goldman博士は「これまでの50年間は、数ある病気ごとに個別の対処方法を開発することによって寿命を延ばしてきましたが、結果的に長生きはできても健康に問題を抱えながら老後を送るケースを増やすことになってしまいました。もし加齢による老化そのものを遅らせる研究が進むと、そのような病気の発生と進行そのものを防ぐことが可能になります」と語り、従来のような「今後数十年間でガンの発生率を25パーセント減少させる」というような方法を続けても、人々の健康面と費用面の両方でのメリットはほとんどないと指摘しています。

研究チームの一員であるイリノイ大学のS. Jay Olshansky氏は、この新しい医療のあり方についてこう語っています。「加齢を遅らせることに関するどんな小さな発見でも、健康と人生の質(クオリティ・オブ・ライフ)に大きなインパクトを与えることになるでしょう。この方法論は人々の健康に対する根本的に新しい考え方であり、あらゆる病理に共通して横たわる問題の根本に立ち向かうものです。今すぐにでもこの研究を開始するべきです。どのメカニズムが加齢を遅らせることに関連しているかはわかっていませんし、おそらくいくつもの解決策があるはずですが、まずは『取り組む価値のあるもの』として認識を行うことが必要なのです」

By Gareth Williams

100歳を超える長寿の人に共通する遺伝子の研究から、加齢を遅らせる方法が少しずつ明らかになってきています。また、動物実験レベルでは、薬剤やカロリー制限などの方法で老化を食い止める兆候を確認することもできました。

◆加齢速度を遅くすることによるメリットとそのコスト
それでは、新しい方法にはどのようなメリットが期待できるのでしょうか。報告書では、51歳の患者がガンまたは心臓の病気を患っている場合の例を挙げて説明しています。従来の方法では平均して寿命を1年上乗せすることができるのに対し、加齢を遅らせる方法をとっていれば寿命を2年以上長くすることが可能で、しかもその間の健康状態は、より良好な状態をキープできるとしています。

また、この方針転換により向こう50年間で7兆1000億ドル(約690兆円)の経済的メリットがあると試算しています。しかし同時に、人口一人あたりにかかる医療費は減るものの、65歳以上の人口が増加するために医療費全体の削減にはつながらないということも述べています。

By 401(K) 2012

「特定の病気ごとに研究を集中させる従来の方針から、老化の速度を遅めて根本的に病気の発生を避ける方法へとシフトすることで、人々の健康状態が改善され、社会との関わりを持ち続けることができるようになると考えています。ここにはとてつもなく大きなメリットがあり、その恩恵は将来の世代にまで及ぶでしょう。財政的には大きな挑戦になりますが、施策の転換と、無視できないほど大きい経済的価値を見いだすことによって実現されると思っています」とGoldman氏は語っており、新しい施策への転換を促しています。

By Andi Jetaime

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