サイエンス

うつ病は進行し何年も患うことで脳は変質してしまう

by Chris Barbalis

何年もうつ病を患うことで脳が変化することが、カナダのCentre for Addiction and Mental Health(メンタルヘルス・依存症センター/CAMH)の研究によってわかりました。この研究結果は、「アルツハイマー病のように、うつ病も進行具合によって異なる治療が必要になる」ということを示します。

Association of translocator protein total distribution volume with duration of untreated major depressive disorder: a cross-sectional study - The Lancet Psychiatry
http://www.thelancet.com/journals/lanpsy/article/PIIS2215-0366(18)30048-8/fulltext

Over years, depression changes the brain, new study shows
https://medicalxpress.com/news/2018-02-years-depression-brain.html

精神医学を研究するJeff Meyer教授らによるCAMHの研究チームはポジトロン断層法(PET)という検査法でうつ病患者の脳をスキャンしました。脳脊髄中に存在するミクログリアという免疫細胞は人が外傷を負うと活性化し炎症反応を示しますが、この炎症反応が過剰だと、「うつ」などの他の病気に関連するようになるといわれています。またミクログロリアの活性化はTSPOというタンパク質を増産させるところ、今回の調査ではTSPOレベルが炎症のマーカーとしてPETで観察されました。

研究では、10年以上にわたってうつ病の症状がある被験者25人と、うつ病の症状が出ている期間が10年以内の被験者25人、そしてうつ症状のない30人の比較グループをPETにかけて観察したところ、10年以上うつ病の症状のあるグループは10年以下のグループに比べて、異なる脳の領域でTSPOレベルが30%も高かったとのこと。もちろん、うつ症状のない被験者らと比べても、長期にわたってうつ症状のあるグループはTSPOレベルが高かったといいます。

by Asdrubal luna

「アルツハイマー病やバーキンソン病がそうであるように、脳で大きな炎症が起こる病気では、進行とともに脳が変質します」とMeyer教授は述べています。

うつ病は脳変性疾患とは考えられていませんが、今回の研究は「うつ病は進行性のものであり、静的な疾患ではない」ということを示す証拠となります。うつ病の治療は、何年患っていても同じアプローチが取られますが、研究者らはガンなどと同じようにステージによって異なるアプローチが行われるべきだと見ています。

長期にわたってうつ病を患う患者に対して、どのような治療が適しているのかは、Meyer教授らが調査を続けているところ。炎症反応にターゲットを置いた治療がオプションとして考えられており、他の病気の治療で使われる炎症反応を抑える薬が大うつ病性障害に適用されることも考えられるそうです。

by Maira Gallardo

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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