なぜ睡眠不足でも「うつ」になりにくい人がいるのか?
by Anca Luchit
睡眠とうつ病の間には関連性があると過去に行われた研究で報告されていますが、たとえ睡眠不足の状態であってもうつ症状が出にくい人が存在するのも事実。では、なぜ同じ睡眠不足の状態であってもうつ症状が出やすい人と出にくい人がいるのか?ということが、約1100人の脳をスキャンした研究によって示されました。
Reward-Related Ventral Striatum Activity Buffers Against the Experience of Depressive Symptoms Associated with Sleep Disturbances | Journal of Neuroscience
http://www.jneurosci.org/content/early/2017/09/18/JNEUROSCI.1734-17.2017
This Area of the Brain May Explain a Link Between Poor Sleep and Depression
https://www.livescience.com/60441-reward-response-in-brain-could-buffer-against-depression.html
アメリカ・ノースカロライナ州のデューク大学の研究者らは、約1129人の大学生に睡眠状態と気分に関するアンケートに答えてもらった上で、脳スキャンを実施。脳スキャンの間、被験者らにはゲームをプレイしてもらうことで、報酬に関わる事象が発生した時に神経細胞が発火する線条体の様子が観察されました。研究を行った1人であるAhmad Hariri教授によると、線条体は報酬学習のハブのようなものとのこと。
ゲームの内容はカードの数字が5よりも大きいか小さいかを当てるというもので、正解率が高くなるほどお金をもらえるようになっていました。被験者らは正解すると賞賛の言葉を受け取り、間違えるとネガティブなフィードバックを受け取ります。ゲームは1ラウンドあたり1分、計6ラウンド行われたのですが、実際には各ラウンドは80%の確率で正解あるいは不正解になるように操作されていました。
by jesse orrico
研究者らが、脳スキャンにおいて、それぞれの被験者が報酬に対してどれほど強く反応するのかを観察したところ、報酬への反応が強い人は睡眠不足による負の影響を受けにくいことが判明しました。つまり、同じ睡眠不足の状態であっても、報酬への反応が強い人は報酬への反応が弱い人に比べて、うつの症状が出にくいというわけです。
うつの症状の1つに、以前は楽しめたことにも喜びを見いだせなくなる「無快感症」というものがあり、これまでの研究で無快感症と線条体が関係していると報告されていました。一方で、今回の研究は、線条体が無快感症にとどまらず、うつの症状全てに関係しているということを示したものになります。
ただし、今回の研究では被験者の不眠の状態がうつの症状の後に出たのか前に出ていたのかが調査されていないこと、そして被験者が比較的若い男女であったために他の年齢層の人々にそのまま当てはめ可能なのかが不明であることに対してHariri教授は注意を促しています。
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