犬は「おしっこに含まれる新型コロナウイルスの匂い」を嗅ぎ分けることができる

犬は非常に優れた嗅覚を持っており、てんかんの発作に伴い発生する匂いやがんの匂いを嗅ぎ分けられることが知られています。アメリカ・ペンシルベニア大学の研究チームが行った新たな実験では、犬が「おしっこに含まれる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の匂い」を嗅ぎ分けられることが実証されました。

Discrimination of SARS-CoV-2 infected patient samples by detection dogs: A proof of concept study
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0250158

With impressive accuracy, dogs can sniff out coronavirus | Penn Today
https://penntoday.upenn.edu/news/impressive-accuracy-dogs-can-sniff-out-coronavirus

Trained dogs can smell coronavirus in your pee | Live Science
https://www.livescience.com/dogs-sniff-out-coronavirus.html

以前から犬の嗅覚を新型コロナウイルスの検出に用いる試みが行われており、2020年の研究では訓練された犬が唾液などの分泌物に含まれる新型コロナウイルスの匂いを嗅ぎ分けられることがわかっています。こうした研究結果を受けて、すでにドバイやフィンランドの空港などで「新型コロナウイルス探知犬」が試験的に導入されています。

犬は新型コロナウイルスの匂いを嗅ぎ分けるように訓練可能 - GIGAZINE

しかし、これまでの研究では新型コロナウイルスが含まれる量が多い唾液などに焦点が当てられており、比較的サンプルに含まれるウイルス量が少ない尿でも犬が嗅ぎ分けられるかどうかは不明だったとのこと。そこで研究チームは、これまで医療検出作業を行ったことがない8頭のラブラドールレトリバーと1頭のベルジアン・シェパード・ドッグ・マリノア(ベルジアンマリノア)を対象に、新たな実験を行うことにしました。

今回の研究では、まず9頭の犬に特定の匂いを検出する作業を覚えてもらうため、自然環境には存在しないユニバーサル検出化合物(UDC)を用いて訓練しました。この訓練では、円形状に並べられた12個の「香りポート」のうち1つにUDCを設置し、犬がUDC入りのポートに反応するたびに報酬を与えたとのこと。以下の写真が訓練や実験で使われた円形状の香りポートで、棒の先にある細かな穴が空いた部分から匂いが放出される仕組みです。

犬がUDCを覚えた後、研究チームは検査でSARS-CoV-2陽性であることが確かめられた患者から採取した尿サンプルを用いて、同様に香りポートを使用した訓練を行いました。サンプルはSARS-CoV-2陽性だった2人の大人と5人の子ども、そして対照群として陰性だった6人の子どもから採取されたものであり、ウイルスは熱または界面活性剤によって不活性化されていたと研究チームは述べています。

3週間にわたる訓練の結果、9頭の犬は平均で96％の精度でSARS-CoV-2陽性の尿サンプルを識別できることが判明し、陰性の尿サンプルを正しく陰性だと判断する特異度も99％でした。一方、「1度でもSARS-CoV-2陽性の香りポートを反応せずに通過したら『ミス』としてラベル付けする」という厳格なルールに基づくと、陽性の尿サンプルを正しく陽性だと判断する感度は68％にとどまったとのこと。

今回の実験では、「サンプル採取時にはSARS-CoV-2陰性だったものの、過去に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した患者」のサンプルも含まれており、犬はこの患者から採取されたサンプルに反応しやすい傾向も見られたそうです。また、繰り返し同じ被験者群のサンプルで訓練した影響か、完全に新しいサンプルにおける検出精度が低かったとのこと。研究チームは今回の実験から得られた教訓として、将来の実験では同じ個人から採取したサンプルで繰り返しテストせず、より多くのサンプルを用いて犬を訓練するとしています。

by Pat Nolan

記事作成時点で研究チームは、人間が1晩着用したTシャツの匂いから「その人がSARS-CoV-2陽性かどうか」「その人がワクチン接種を受けたかどうか」を識別する「Tシャツ研究」を進めているとのことです。研究チームのシンシア・オットー氏は、「Tシャツ研究では今回の研究よりもはるかに多くのサンプルを収集しており、犬が地域社会で遭遇する可能性がある状況に近づくことを期待しています」と述べました。