犬は小さじ10億分の1のガソリンを嗅ぎ分けることができる
犬は人の100万倍も鋭い嗅覚を持ち、警察犬や麻薬探知犬などは訓練によって研ぎ澄まされた嗅覚を使って社会に貢献しています。そんな犬の嗅覚は、訓練次第でわずか小さじ10億分の1ほどのガソリンでさえ嗅ぎ分けることが可能になると、アルバータ大学の研究チームが発表しました。
A novel protocol for producing low-abundance targets to characterize the sensitivity limits of ignitable liquid detection canines - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2468170920300187
Dogs can detect traces of gasoline down to one billionth of a teaspoon | Faculty of Science
https://www.ualberta.ca/science/news/2020/may/dogs-smell-gasoline.html
ガソリンなどの発火性液体の痕跡を探し出すため、王立カナダ騎馬警察(RCMP)は放火事件の捜査で犬を利用することがあります。しかし、犬が果たしてどの程度までガソリンの匂いを嗅ぎ分けることができるのかはこれまで明らかにされてこなかったと研究チームは指摘。
そこで、研究チームは実際に火災現場の捜査で活躍する2匹の犬を用意し、ガソリンの匂い、あるいはその他の発火性液体の匂いを探知するように訓練しました。さらに、陶片や木片にガソリンや発火性液体を染み込ませ、量を変化させながら犬が検出できるかどうかを調査しました。
以下は、普段はRCMPの放火捜査犬として活躍し、被験犬としてアルバータ大学の実験にも参加した「エザ」
研究チームによれば、ガソリン以外の発火性液体の匂いで訓練された犬はさまざまな種類を嗅ぎ分けることができましたが、ガソリンの匂いで訓練された犬はガソリン以外の発火性液体の匂いに対しては嗅覚が鈍くなったことがわかりました。
また、ガソリンの匂いで訓練された犬は小さじ10億分の1、つまり5ピコリットル(1ピコリットルは1兆分の1リットル)の量のガソリンを検出可能であることも判明しました。つまり、実験室の設備がなければ検出できないレベルの証拠でも、訓練した犬であれば放火事件の現場で証拠を発見することができるというわけです。
さらに、火災で燃えた建物の匂いの中でも、犬は問題なく証拠品を見つけることができたとのこと。
論文の筆頭著者でアルバータ大学化学科のロビン・アベル氏は「犬の嗅覚の鋭敏さにあらためて衝撃を受けました」と述べ、「犬は法廷で証言することはできません。しかし、犬が示した場所から証拠となる残骸を持って帰り、分析することは可能です。放火事件における犬の検出レベルが判明したことは、さまざまな証拠を処理する法医学研究所にとって大きな目安になります」と語りました。
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