糖尿病探知犬のように人間の息から低血糖を検出できる医療器具が登場する可能性
糖尿病患者は時として血糖値が著しく下がってしまうことがあり、処置が遅れると命の危険に関わることもあります。ケンブリッジ大学・Institute of Metabolic Science(IMS)が低血糖発作を起こした患者の呼吸にある化学物質が含まれていることを発見したことで、「糖尿病探知犬のように呼気から低血糖状態を検知する医療器具が登場する可能性が出てきています。
Exhaled Breath Isoprene Rises During Hypoglycemia in Type 1 Diabetes | Diabetes Care
http://care.diabetesjournals.org/content/39/7/e97
Diabetes sniffer dogs? ‘Scent’ of hypos could aid development of new tests | University of Cambridge
https://www.cam.ac.uk/research/news/diabetes-sniffer-dogs-scent-of-hypos-could-aid-development-of-new-tests
糖尿病患者の血糖値が低くなると、手足や体の震え・見当識障害・疲労などの症状を引き起こす場合があります。できるだけ早く血糖値を上昇させる処置をとらなければ、意識レベルが低下したり、重篤な場合は意識障害や昏睡に陥ったりすることもあります。人によっては軽い症状からすぐさま発作が始まることもあるため、血糖値の変化には細心の注意を払う必要があります。
血糖値の変化をかぎ分けられる糖尿病探知犬の報告書を読んだIMCの研究者は、「血糖値が変化すると呼気の中に特定の化学物質が増加するのでは」と考えました。この仮説を検証するため、研究チームは40代の1型糖尿病女性患者8人の協力のもと、低血糖時の状態を質量分析法で検査しました。その結果、低血糖症に陥ると患者の体内のイソプレンが著しく上昇することが判明。何人かは2倍もの上昇を記録した患者もいたとのこと。
ケンブリッジ大学の医師であるマーク・エヴァンス博士は「イソプレンは人間の呼吸の中で最も一般的な天然化学物質の1種ですが、体内からどうやって発生しているのか詳しいことはわかっていません」と話しています。エヴァンス博士らはコレステロール生産の副産物ではないかと考えていますが、なぜ血糖値が著しく低下した際にイソプレンの量が低下するのかはわかっていないとのこと。
人間はイソプレンの存在を嗅覚で検知できませんが、嗅覚の優れた犬にとっては簡単にかぎ分けられることもわかっています。今後研究チームは、指に針を刺す従来の血糖測定機を使わなくても、糖尿病探知犬や酒気検査のような方法で簡単に血糖値を測定できる測定器や、糖尿病探知犬と同レベルでイソプレンを検知できる検出器といった新しい糖尿病の医療器具の開発を進めていくとのことです。
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