探知犬にウソ発見器をつけてほぼ100％にまで精度を高める方法が開発されている

犬は人の1億倍まで感知できる嗅覚を持っているといわれ、猟犬や警察犬、空港の麻薬捜査犬、爆発物探知犬など、その優れた嗅覚を人間に利用されてきました。探知犬を警備に雇っているロシアの空港では、犬にウソ発見器をとりつけることで犬による危険物や爆発物の探知精度をおよそ100％まで高めることに成功したそうです。

A jackal's nose for the job
https://www.rbth.com/longreads/jackals/

ロシア・モスクワ市内にあるシェレメーチエヴォ国際空港では、匂いで爆発物や有害物質を検出する探知犬がセキュリティ部門の一員として働いています。この探知犬は、ライカとキンイロジャッカルをかけあわせたジャッカル・ハイブリッドで、14年ほどシェレメーチエヴォ空港に勤務しています。

犬とジャッカルは厳密には異なる種ですが、近縁関係にあるため交配しても繁殖能力を持つ個体が生まれてきます。生まれてきたジャッカル・ハイブリッドは普通の犬よりも優れた嗅覚を持っているとのこと。ソビエト内務省に勤めていた生物学者のKlim Sulimov氏が1980年代後半にこの交配を考えたことから、ジャッカル・ハイブリッドは「Sulimov犬」と呼ばれることもあるそうです。Sulimov氏は「繁殖され飼いならされる以前、およそ10万年前の犬を再現しようとしたのです」と述べています。

ジャッカル・ハイブリッドの子犬は3カ月から探知犬として訓練されますが、「職場」に慣れるために生後1カ月から空港へ連れて行かれるとのこと。訓練の第一歩は、指を鳴らす音を聞いて即座にお座りができるようになることだそうです。

しかし、従来のように犬を使って捜査を行う方法では、危険物や爆発物を見つけるともらえる「ごほうび」が欲しいあまりに、犬が「発見した」というウソのアピールをしてしまう場合もあるそうです。そのため、実質的な精度は60％程度にとどまってしまうとのこと。アエロフロート航空安全局の副局長を務めるAzat Zaripov氏は「犬がつくウソは検出が困難です。犬は笑顔を浮かべませんし、ウインクもしません」と語ります。

しかし、アエロフロート航空安全局が考案した新しい方法は、危険物や爆弾物の検出精度をおよそ100％に向上させたそうです。実際に約1000回に渡る実験を行ったところ、間違えたのはそのうちわずか8回でした。

この新しい方法は、脳波や心電図、呼吸など、生体活動を観察する装置を犬に装着するというもの。装置の観察結果はリアルタイムで捜査官が手にするコンピューターに送られます。Zalipov氏によるとまだ開発段階の初期であり、装置はかなりかさばっているとのことですが、既に小さい犬でも持ち運べるほどには収めているとのこと。

犬が何かを見つけたことを知らせるために座り込む時、本当に見つけて座り込んでいるのか、ごほうび欲しさにウソをついて座り込んでいるかのどちらかは、脳波や心電図など中枢神経系をモニターすることで容易に判別ができるそう。つまり、犬にウソ発見器をつけることで、犬による探知の精度を飛躍的に向上させているというわけです。また、人間と同様にバイタルサインからウソをついていることが分かることから、犬にも「罪悪感」が存在していることが示されました

Zalipov氏は「たとえ最も高価なものであったとしても、あらゆる種類の機器はその動作特性に一定の制限があります。ジャッカル・ハイブリッドの嗅覚は機械の10倍優れているといわれていますが、人間は精密な測定結果をはっきり示す機械の方を信用しがちです」と述べています。シェレメーチエヴォ国際空港ではジャッカル・ハイブリッドを3匹飼育し、本格的に探知犬として警備システムに導入しているとのことです。