生き物

犬は飼い主の不安を感じ取って飼い主の苦痛を解消するために行動する

by LuAnn Snawder Photography

犬は古くから人間と共に暮らしてきた動物であり、世界中で多くの人々が犬を飼っています。人間の精神的な支えになっていることもある犬は、「飼い主の苦痛を解消したい」と感じて飼い主を助ける行動を取ることがわかりました。

Timmy’s in the well: Empathy and prosocial helping in dogs | SpringerLink
https://link.springer.com/article/10.3758%2Fs13420-018-0332-3

Your Dog Knows When You're Upset, and Wants to Help
https://www.livescience.com/63144-dogs-want-to-help-upset-humans.html

以前から犬がどの程度人間の悲しみや苦痛に反応するのかという研究が行われており、「犬は人間が泣くと反応して近づいてくる」ということなどが判明しています。新たな研究では、34匹のさまざまな品種やサイズの犬とその飼い主に協力してもらい、犬が人間の苦痛や悲しみにどう反応するのかを実験して調査しました。


飼い主は犬とガラスのドアで隔てられた場所に座り、犬は飼い主の様子を見たり声を聞いたりできる場所に入れられました。続いて、飼い主は犬に聞こえるように「助けて」と15秒おきにしゃべりかけ、研究者は犬がどのように反応するのかを確かめたとのこと。

実験は犬と飼い主のペアに対して、「飼い主が実は苦痛を感じていない場合」と「飼い主が本当に苦痛を感じている場合」の2通りのうち、どちらか一方だけが行われました。「苦痛を感じていない場合」では、飼い主は「助けて」と話しかける間に童謡のきらきら星をハミングで歌い、「助けて」と話しかける声のトーンも単調なものにするように指示されていたそうです。

一方、「苦痛を感じている場合」では、「助けて」と話しかける間の15秒間ですすり泣きの演技をし、「助けて」という声も本当に苦しそうに発するように飼い主は指示を受けていました。そして、犬がマグネットで閉じられたガラスのドアを鼻や頭で押し、飼い主のもとに駆けつけるのかどうかや、ストレスを感じた時に行うしぐさや犬の心拍数もチェックしたそうです。

by llee_wu

その結果、5分間の実験時間中に犬がドアを開けるかどうかの割合は、飼い主が泣いていてもハミングをしていても変わらないことが明らかになりました。しかし、ドアを開けた犬については、飼い主がハミングをしている時よりも泣いている時のほうが、平均して約40秒ほど早くドアを開けたとのこと。

加えて、犬がストレスを感じた際に取る行動をチェックしたところ、飼い主が泣いている時にドアを開けた犬よりも、ドアを開けなかった犬のほうが高いストレスを感じていることがわかりました。これは、ドアを開けなかった犬が何も感じていなかったわけではなく、飼い主が泣いている姿に対して苦痛を感じていたことを示しています。

研究者らは犬の心拍数についても測定していましたが、ドアを開ける犬の中には実験開始からわずか20秒でドアを開けて実験を終了させてしまう犬もおり、信頼性の高いデータは得られなかったとのこと。また、飼い主の演技力によっても実験内容が左右される可能性もあり、必ずしも完全な実験ではなかったと研究者らは考えています。

by Lucas Ryoiti Maruo

最後に、研究者らは犬に対して「解決できないタスク」を与える実験を行いました。飼い主と見知らぬ参加者がいる部屋に犬が入れられ、犬は瓶の中に入った食べ物を取るように教えられます。飼い主と見知らぬ参加者は犬と目を合わせず、部屋の隅をじっと見るように指示されており、犬に協力することは許されていなかったとのこと。

実験は全部で3回行われました。最初の2回は犬だけで瓶の中の食べ物を取ることができますが、最後の1回は瓶のフタが閉められているため、犬は食べ物を取ることができません。そこで、多くの犬は飼い主に助けを求めるため、飼い主のほうをじっと見つめるという行動を取りました。

飼い主が泣いていた時にドアを開けた犬は、ドアを開けなかった犬よりも長い時間、飼い主が気づいてくれるのをじっと見つめたまま待ち続けていたとのこと。一方で、飼い主がハミングをしている時にドアを開けた犬は、ドアを開けなかった犬よりも長い時間飼い主を見つめ続けることはなかったそうです。研究者は、「この結果は、飼い主が泣いている時にドアを開けた犬は、飼い主と強い信頼関係で結ばれている可能性を示しています」と述べており、犬の共感能力と飼い主との信頼関係に関連があるかもしれないとしています。

by Josh Rook

今回の実験では、犬が「飼い主を助けたい」と思ってドアを開けたのか、それとも「自分のストレスを和らげたい」と思ってドアを開けたのかはわかりません。それでも、「犬が飼い主の苦痛に反応し、助けようとする」という可能性が示される結果になりました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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