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クーデターが勃発したミャンマーでインターネットの監視が強化されている


ミャンマーでは2021年2月1日に軍事クーデターが勃発し、アウンサンスーチー国家顧問やウィン・ミン大統領が軟禁され、政府高官や議員も拘束される事態となっています。クーデターを行ったミャンマー国軍はインターネットの取り締まりを強化しているとニューヨーク・タイムズが報じています。

How the Military Behind Myanmar’s Coup Took the Country Offline - The New York Times
https://www.nytimes.com/2021/02/23/world/asia/myanmar-coup-firewall-internet-china.html

ミャンマー国軍は2月1日の軍事クーデターの際、ヤンゴンなどのデータセンターにも兵力を向け、通信事業のエンジニアらにインターネット回線の切断を命じたとのこと。これにより、ミャンマーではほとんどのインターネット回線が接続不能の状態に陥りました。

クーデター勃発のミャンマーでインターネットが一時遮断される、バイデン大統領は制裁に言及 - GIGAZINE


その後もミャンマー国軍はインターネット規制を強化しており、国内からFacebookへのアクセスが遮断されたほか、2月6~7日にかけてインターネットの接続性が通常時の14%にまで低下する事態になりました。

ミャンマーではSNSやメッセージアプリを通じて数百万人もの人々が団結し、クーデターに抗議するデモ活動も行われています。しかし、2月半ば以降は深夜1時~朝9時にかけてインターネットが遮断される日が続いており、ミャンマーに進出したTelenorOoredooといった外資系企業もミャンマー国軍の指示に従っているとのこと。

また、ミャンマー国軍はクーデターの翌週に、36ページの「サイバーセキュリティ法」をインターネットサービスプロバイダー(ISP)に配布しました。この法律では、ISPは軍の指示に応じてウェブサイトをブロックしたり特定ユーザーのアクセスを遮断したりする必要があるほか、政府がユーザーデータへの幅広いアクセス権を有し、ISPがユーザーデータを3年間保存することも定められています。

ミャンマーのテクノロジーを追跡する市民団体・MIDOの事務局長を務めるMa Htaike Htaike Aung氏は、「サイバーセキュリティ法はオンラインの人々を逮捕するための法律です。この法案が通過すれば、デジタル経済は私たちの国からなくなるでしょう」と述べました。


サイバーセキュリティ法は、ミャンマーで進められている中国式監視体制の構築の一環だとされています。2020年にはミャンマー政府が携帯電話サービスの契約者に対して、名前・親指の指紋・ID番号及びIDカードのスキャンの提出を義務づけたため、「中央データベースに生体情報を保存しようと計画した」と報じられました。これは中国の実名登録データベースと類似しており、ミャンマーは中国にならった方法で国民の監視を進めているとのこと。

以前から中国はミャンマーへの影響力を強めており、中国の通信機器メーカーであるHuaweiとZTEは西側諸国がミャンマーに経済制裁を科していた時期に、ミャンマー国内の通信ネットワークの多くを構築しました。近年では首都・ネピドーでも車や人を追跡するHuawei製監視カメラの数が増加しており、道路監視技術がミャンマーに導入されているとニューヨーク・タイムズは指摘しています。

これまでのところ、ミャンマー国軍のインターネット規制は比較的ローテクな手法に頼っているものの、今後はより洗練された手法でインターネット規制を強める可能性もあります。ミャンマーでは過去10年で数千人もの軍関係者がロシアで最新テクノロジーを勉強しており、2018年には外国のソースが不安を広げて国民を扇動することを防ぐ「ソーシャルメディア監視チーム」も設立されたとのこと。


ミャンマーの技術専門家によると、数千人のサイバー兵士がミャンマー国軍の下で活動しており、ウェブサイトやVPNのブロックを行っているそうです。将来的にはより積極的なデジタル防御システムの構築も試みているとのことですが、高度なシステムの開発には中国やロシアの支援が必要になる可能性があるとのこと。

中国式のインターネット監視システムの導入を検討するのはミャンマーだけではありません。2020年にはカンボジアも、中国式のインターネット監視システムの導入を検討していると報じられています。

カンボジア、ネット監視で「中国式」導入: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63413580T00C20A9FFJ000/


ミャンマーがインターネット監視を強める一方で、インターネットの遮断は現地ビジネスの利益を損ない、外国投資家の信頼を低下させる行いであり、ミャンマー経済にとって大きな打撃になっているとニューヨーク・タイムズは指摘。ミャンマーコンピュータ専門家協会のKo Zaw Thurein Tun氏は、「国際的な銀行取引は停止しており、国の経済は衰退しています。ミャンマー国軍はまるで、自分のオシッコを自分の顔にかけているようなものです」と述べました。

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in ネットサービス, Posted by log1h_ik

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