サイエンス

電子レンジを使って石炭の粉末をグラファイトに変える手法が開発される


地中に埋もれた古代の植物が長期間にわたり地熱や地圧を受けて変質した石炭は、長らく重要な燃料として世界中の工業を支えてきましたが、近年では再生可能エネルギーへの切り替えが進んで石炭の価値は下落しています。アメリカ・ワイオミング大学の研究チームは一般的な電子レンジを使い、石炭をより価値の高いグラファイトに変換する方法を開発しました。

Converting raw coal powder into polycrystalline nano-graphite by metal-assisted microwave treatment - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352507X20301281

UW Researchers Turn Coal Powder into Graphite in Microwave Oven | News | University of Wyoming
http://www.uwyo.edu/uw/news/2021/01/uw-researchers-turn-coal-powder-into-graphite-in-microwave-oven.html


グラファイトは石炭の主要構成物でもある炭素からなる元素鉱物であり、工業用の潤滑剤や原子炉の減速材などに利用されています。また、グラファイトが原子1個分の単一層になったグラフェンは、熱伝導や導電性に優れているなどの多様な特性を持っていることから、さまざまな用途での応用が期待されている素材です。

以前から石炭をグラファイトに変換する手法についての研究が進められており、変換には「高温の環境」「酸素を奪う性質を持った還元性ガスに満たされた還元雰囲気」「触媒」「マイクロ波の放射」といった要因が必要であることが特定されていました。

ワイオミング大学の研究チームは「一般的な家庭用電子レンジの中」でこれらの要因を満たせると考えたとのことで、化学的な前処理をしていない石炭粉末を、電子レンジを用いてグラファイトに変換する手法を考案しました。


まず研究チームは、銅をシート状に薄く伸ばした銅はくをフォーク状に切断し、その上に粉末状にした石炭をのせました。そして、この銅はくと石炭粉末を、アルゴンおよび水素の混合ガスで還元雰囲気にしたガラス容器に入れて密封し、家庭用の電子レンジで加熱しました。

電子レンジで加熱を始めてマイクロ波が放射されると、ガラス容器の中で火花が生じて石炭を多結晶グラファイトへ変換するのに十分な高温が生成され、石炭がグラファイトに変換されたそうです。論文の筆頭著者であるChristoffer Masi氏は、「銅はくをフォーク状に切断することにより、マイクロ波放射によって火花が誘発され、わずか数秒以内に1800度以上の超高温が発生します。これが、電子レンジに金属製のフォークを入れてはいけない理由です」と述べました。

実験ではマイクロ波の照射時間を3~45分の幅で比較して変換効率を調査しており、最適なマイクロ波の照射時間は15分であることも判明しました。電子レンジを使って石炭からグラファイトに変換する手法は費用対効果が高いそうで、この手法に改良を施してスケールアップすることにより、さらに高品質で大量のグラファイトを製造できると研究チームは考えています。

by James St. John

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
世界初の2次元素材であるグラフェンは3次元素材でもあるとの研究結果 - GIGAZINE

夢の素材「グラフェン」をミキサーで製造する手法が登場、未来型デバイスの誕生に光 - GIGAZINE

夢の素材である「グラフェン」のシートを高品質で大量に製造する方法をMITの研究者が開発 - GIGAZINE

夢の素材「グラフェン」研究を影から支える日本人研究者が存在する - GIGAZINE

世界で初めて「炭素原子だけで構成された環」を作り出すことに成功 - GIGAZINE

あのダイヤモンドよりもさらに硬い「ペンタダイヤモンド」の存在が予言される - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.