あのダイヤモンドよりもさらに硬い「ペンタダイヤモンド」の存在が予言される
宝石として古来から人気が高いだけではなく、工業用カッターや科学実験にも使われるダイヤモンドは、天然の物質の中では最高クラスの硬度を誇ることで知られています。そんなダイヤモンドを上回る硬度を持つ「ペンタダイヤモンド」の存在を、筑波大学ナノ構造物性研究室の研究チームが予言しています。
Phys. Rev. Lett. 125, 016001 (2020) - Pentadiamond: A Hard Carbon Allotrope of a Pentagonal Network of sp2 and sp3 C Atoms
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.125.016001
Researchers building a harder diamond, called pentadiamonds
https://phys.org/news/2020-07-harder-diamond-pentadiamonds.html
筑波大学|お知らせ・情報|注目の研究|ダイヤモンドより軽く強靭な炭素結晶の存在を予言 ~「ペンタダイヤモンド」が物質科学の新たな展開を促す~
http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p202007011400.html
天然の物質の中では最高クラスの硬度を誇るダイヤモンドは、炭素が地中で高温・高圧状況下に置かれることで生成されます。ダイヤモンドを構成する炭素原子は、隣接した原子と共有結合でつながることが可能で、炭素同士が共有結合することで結晶化します。
物質の硬度は物質がどのように結合しているのかに左右され、炭素がどのように共有結合するのかは、炭素原子がもつ電子がどのように振る舞うかという「原子軌道」に大きく影響されます。通常のダイヤモンドは「sp3混成軌道」で共有結合して生まれる結晶ですが、筑波大学の研究チームは「sp3混成軌道とsp2混成軌道を組み合わせて結晶化した場合にどうなるか」を調査しました。論文著者で筑波大学ナノ構造物性研究室の藤井廉丸氏は「sp2混成軌道の炭素原子とsp3混成軌道の炭素原子を含む同素体は、結合の組み合わせと位置によって形態学的多様性が大きくなります」とコメントしています。
研究チームは密度汎関数理論に基づいて炭素の電子状態をコンピューターで計算し、最も安定した原子配置を計算しました。その結果、五角形を基本とする構造を持つ結晶「ペンタダイヤモンド」が従来のダイヤモンドを上回る硬さの物質であると研究チームは予想しました。
以下の図は従来のダイヤモンドの結晶構造です。炭素原子が4つの共有結合で相互に結びついているのが特徴。
by Viktor Håkansson Ingre
そして、以下の図がペンタダイヤモンドの結晶構造。炭素原子5つによる五角形が組み合わさったような構造であることがわかります。
ペンタダイヤモンドはあくまでもシミュレーションの結果であり、実際に合成されたわけではありません。それでも研究チームのシミュレーションによれば、ペンタダイヤモンドは物質の硬さを示すヤング率や剛性率で従来のダイヤモンドを上回るとのこと。また、従来のダイヤモンドの硬度がおよそ1200ギガパスカルであるのに対し、ペンタダイヤモンドは1691ギガパスカルの硬度を誇ると算出されたそうです。ナノ構造物性研究室の丸山実那助教は「ペンタダイヤモンドは従来のダイヤモンドよりも硬いだけでなく、同じ炭素同素体のグラファイトと同じくらい低い密度を誇ります」と説明しています。
また、ナノ構造物性研究室の岡田晋教授は「このペンタダイヤモンドを使えば、材料を根本から再設計できる可能性があります。カッターや穴あけドリルといった工業的用途に加えて、研究室で惑星内部の極端な圧力を再現できるダイヤモンドアンビルセルに、ペンタダイヤモンドが応用できる可能性があります」と述べました。
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