人は「自分は他の人よりフェイクニュースにだまされにくい」と考えがちだと研究で判明
人々を惑わせるフェイクニュースの拡散は、新型コロナウイルスのパンデミックなどの脅威に立ち向かう人類にとって大きな課題です。アメリカの成人を対象とした調査により、多くの人が「自分は平均的な人よりもフェイクニュースにだまされにくい」と過信している実態が明らかとなっています。
The presumed influence of digital misinformation: examining US public’s support for governmental restrictions versus corrective action in the COVID-19 pandemic | Emerald Insight
https://www.emerald.com/insight/content/doi/10.1108/OIR-08-2020-0386/full/html
Study Highlights What Makes COVID Misinformation So Tough to Stop on Social Media | NC State News
https://news.ncsu.edu/2020/12/covid-misinformation-online/
新型コロナウイルスの流行初期からフェイクニュースの拡散は大きな問題となっており、「第5世代移動通信システム(5G)が新型コロナウイルスの流行に寄与している」というウワサを信じた人々が電波塔に放火するといった事件が起きたほか、「ビル・ゲイツが新型コロナウイルスワクチンと偽ってマイクロチップを埋め込もうとしている」という陰謀論まで大流行しました。
「ビル・ゲイツが新型コロナウイルスワクチンと偽ってマイクロチップを埋め込もうとしている」という陰謀論が大流行 - GIGAZINE
by OnInnovation
また、新型コロナウイルスのワクチン開発が進むにつれてワクチン反対派の動きが活発になっていることも指摘されており、TwitterやFacebookはワクチンに関する誤情報や陰謀論を削除する対応に追われています。
アメリカ政府の感染症対策を主導するアメリカ国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長はCNNのインタビューで、「問題は、新型コロナウイルスのパンデミックが明らかであり病院がパンクの危機に瀕している時でさえ、国内のさまざまな場所に『パンデミックは現実ではなく、フェイクニュースかデマだ』と思っている人々が高い割合でいることです」とコメント。公衆衛生対策において、パンデミックに関するフェイクニュースを信じてしまう人が大きな課題であると主張しました。
ノースカロライナ州立大学と華南理工大学の研究チームは、人がフェイクニュースを信じる傾向について調べるため、オンラインで募集した1793人のアメリカ人を対象にしたアンケートを実施。参加者は「「自分や他の人々が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連のフェイクニュースから受けている影響や、フェイクニュースを含むコンテンツを見た際の感情について答えました。
研究チームが回答を分析した結果、参加者は圧倒的に「自分以外の人々はフェイクニュースを信じやすく、自分は平均よりフェイクニュースにだまされにくい」と考える傾向が強かったことがわかりました。この現象は第三者効果と呼ばれるものであり、メディアからの情報にさらされた人は「自分よりも他の人の方が強く影響を受ける」と考えがちだそうです。
論文の筆頭著者であるノースカロライナ州立大学のYang Cheng助教授は、多くの人が自分はフェイクニュースにだまされにくいと考えていることの問題について、「第三者効果によって、メディアリテラシーの教育や訓練に人々を参加させることが難しくなります。これは、ほとんどの人が『自分よりも他の人がトレーニングを必要としている』と考えるためです」と述べています。
また、フェイクニュースを含むコンテンツを見た際は、恐怖・心配・嫌悪といった否定的な感情が呼び起こされる可能性が高いことも判明しました。Cheng氏は「まず、人々は否定的な感情を呼び起こすコンテンツに基づいて行動を起こす可能性が高く、ソーシャルメディアで情報を共有します。そして、感情に焦点を当てたメッセージは、抽象的な科学情報などの中立的なコンテンツよりもソーシャルメディアで簡単に送信されます」と指摘し、フェイクニュースを見た人が否定的な感情によって突き動かされることで、さらにフェイクニュースが拡散されると説明しています。
人々がフェイクニュースを信じやすい傾向がある一方で、Cheng氏は正しい情報を伝えたい側も「人は否定的な感情に基づいて行動しやすい」といった性質を利用できると指摘。「恐怖や心配などの否定的な感情は、人々の情報探索を容易にしたり特定の行動を避けるように促したりする可能性があります。そのため、情報伝達者はCOVID-19と公衆衛生に関する正確な情報を伝えるために、これらの感情的なメッセージの使用を検討できます」と述べました。
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