ゲームをプレイするだけで「フェイクニュースのワクチン」を接種できることが判明
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近年では事実と異なる情報を流して人々を惑わせ、時には政治や経済などにも影響を与えるフェイクニュースが大きな問題となっていて、うっかりフェイクニュースに引っかかってしまったり拡散に一役買ってしまったりした経験がある人もいるはず。そんなフェイクニュースに対する「ワクチン」を、ゲームをプレイすることで接種できるという研究結果が発表されています。
Fake news game confers psychological resistance against online misinformation | Palgrave Communications
https://www.nature.com/articles/s41599-019-0279-9
Fake news ‘vaccine’ works: ‘pre-bunk’ game reduces susceptibility to disinformation | University of Cambridge
https://www.cam.ac.uk/research/news/fake-news-vaccine-works-pre-bunk-game-reduces-susceptibility-to-disinformation
ケンブリッジ大学の研究者らは2018年、「フェイクニュースを拡散しまくることで業界トップを目指す」というコンセプトのゲーム「Bad News」を公開しました。フェイスニュースを拡散するゲームをプレイすることで、逆説的にフェイクニュースの拡散について学べるようになっているとされており、開発者らはBad Newsのプレイが「フェイクニュースのワクチン」として機能することを期待していました。
フェイクニュースを拡散しまくり業界トップを目指すオンラインゲームを研究者らが開発 - GIGAZINE
ゲーム中ではプレイヤーがSNSなどを通じてフェイクニュースや陰謀説などを拡散し、フォロワーを引きつけて恐怖や怒りを誘発します。ケンブリッジ大学の研究者であるSander van der Linden氏は、人々をフェイクニュース拡散の手法に触れさせ、どのようにウソのニュースが作られて人々がだまされるのかについて理解させることで、フェイクニュースに対抗できるのかを調査したかったとのこと。
この研究の背景には心理学者が「接種理論」と呼ぶ考えが存在しており、生物学的なワクチンと同様に、フェイクニュースについての弱いバージョンに触れることで、フェイスニュースにだまされにくくなると予想されていました。
実際に研究チームは1万5000人の参加者にBad Newsを15分ほどプレイしてもらい、ゲームプレイの前後でさまざまなニュースの見出しやツイートに対する信頼性がどのように変化するのかを調査したそうです。ニュースの見出しやツイートには正しいニュースもウソのニュースも混ぜられており、参加者は真実とウソがランダムに混ぜられた中で信頼度のランク付けをおこないました。
by fancycrave1
その結果、わずか15分程度のゲームプレイであっても、プレイ前と比較してプレイ後の方がフェイクニュースに対する信頼性が21%も減少することが判明。一方で真実のニュースに対する信頼性は低下しなかったそうで、Bad Newsをプレイすることがフェイクニュースに対するワクチンとして機能することがわかりました。
また、Bad Newsのプレイによるフェイクニュースへの抵抗性は、プレイ前の評価でフェイクニュースにだまされやすかった人々においてより強化されたとのこと。van der Linden氏は、「私たちは15分のゲームプレイでも一定の効果があることを発見しましたが、世界中の人々にプレイしてもらうことでフェイクニュースへの社会的な抵抗性を築くことができます」と主張します。
共著者であるJon Roozenbeek氏は、「私たちはフェイクニュースへの取り組み方を変化させています。特定のトピックに関するフェイクニュースを対象にするのではなく、フェイクニュース全体に対するワクチンを作り出したいのです」と述べました。
by Jhefferson Santos
今回の研究の参加者は若いリベラルな男性に偏っていましたが、年齢や性別、教育、政治的主張を考慮して分析しても、やはりBad Newsはフェイクニュースへの抵抗性を強めたとのこと。
既に研究チームはイギリス外務省と協力し、ドイツ語やセルビア語、ポーランド語、ギリシャ語バージョンのBad Newsを開発したほか、子ども向けのBad Newsも開発しています。Roozenbeek氏は早いうちからメディアリテラシーを発達させる方法を確立し、フェイクニュースに対する効果がどれほど持続するのかに興味があるとコメントしました。
by bruce mars
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