子どもを「デマにだまされない大人」にする3つのポイントとは?
2019年末から始まった新型コロナウイルスの脅威の終息が見えない中、「SNS上で多数のデマが拡散されている」と指摘されており、こうした状況をWHOはパンデミックならぬ「インフォデミック」と呼んで、デマや誤報への注意を呼びかけています。そこで、「子どもがニュースにだまされないクリティカル・シンキングを身に付けるにはどうしたらいいのか」について、専門家が3つのポイントをまとめました。
3 ways to help children think critically about the news
https://theconversation.com/3-ways-to-help-children-think-critically-about-the-news-131454
子どもにクリティカル・シンキングを身に付けさせる方法についてまとめたのは、ウエスタンシドニー大学の人文科学であるターニャ・ノトレイ氏と、クイーンズランド工科大学でデジタルメディアについて研究しているマイケル・デズアンニ氏らです。
8歳から16歳までの子どもを対象とした2017年の調査では、子どもたちの73%が大人たちと同様にニュース番組などから情報を得ていたほか、49%がSNSを通じてニュースに接していたことが分かりました。しかし、ノトレイ氏らが2018年に発表した(PDFファイル)調査結果からは、「フェイクニュースを見抜くことができる子どもは全体の3分の1しかいない」ことも判明しており、子どもにニュースにだまされない能力を身に付けさせることが急務となっています。そこでノトレイ氏らは、「親や先生が子どもにクリティカル・シンキングを身に付けさせるにはどうしたらいいのか」を、3つのポイントにまとめました。
◆1:信頼できるニュース提供元を見つけられるようにする
ノトレイ氏らの研究では、子どもたちは毎朝のニュース番組からYouTubeチャンネルまで、幅広いニュース提供元に接していることが分かりましたが、どんなニュースであれ以下の要点を押さえることで信頼できるかどうかを判別することができます。
・ニュースを作った人や情報を入手した方法がはっきりと分かるかどうか
・誰かの主観的な意見が入ったものではなく、事実をそのまま伝えたものか
・特定の組織やグループの主張が伝えられている場合は、それ対する反論がきちんと取り上げられているか
◆2:メディアの中には、感情を悪用するものもあることを理解させる
by alan jones
EU加盟国28カ国のオンラインニュースを検証した2017年の研究では、「刺激でセンセーショナルな見出しのニュースほどクリックされやすい」ことが分かっています。このことからノトレイ氏は、「重大な事件が感情を喚起するのは自然なことですが、中には自分たちの私利私欲のために感情を利用するものもあります」と指摘。以下のようなものがその典型的な例だと述べています。
・「コロナウイルスを消滅させる驚きのハーブ!」「シドニーの電車の中でコロナウイルスが急速に拡大!」といった事実に基づかないセンセーショナルな見出しを使う
・亡命希望者を「順番待ちに割り込む人々」と呼んだり、そうした人々を「大ばか」と呼んだりと、感情的で人間性を否定するような言葉を使う
・「有名人が妊娠していることや浮気していることを示唆する写真」など、衝撃的な画像や加工された画像を使う
また、フェイクニュースが拡散される裏には、以下のような意図が隠されていることを教えるのも効果的だとのこと。
・選挙に影響を与える
・人種差別・性差別・同性愛嫌悪・特定の人々への中傷
・故意にセンセーショナルな見出しを付けて広告収入を得るクリックベイト
◆3:ニュースがいろいろな人をどう扱っているかについて話し合う機会を持つ
ノトレイ氏は「新型コロナウイルスにかこつけて、差別主義者がさまざまなフェイクニュースを拡散しています」と指摘しています。その一例として、「中国産の食べ物がコロナウイルスで汚染されている」といった情報や、「コロナウイルスは中国やアメリカで作られた生物兵器である」といった情報が挙げられるとのこと。
以下の記事を読むと、実際に「コロナウイルスは中国で作られた生物兵器である」というデマが取り沙汰されている経緯や、それを否定する専門家の意見などが分かります。
「新型コロナウイルスは人為的に作られた」という陰謀論に科学者が反論 - GIGAZINE
こうしたデマがまん延した結果、オーストラリアではアジア人に対する差別が横行したり、中国人事業者が経営する店から客足が遠のいたりといったことが現実に起きています。
ノトレイ氏とデズアンニ氏はメディアリテラシー研究者としての見地から、「デジタル時代にデマを見抜くことは万人の課題です。その中で、子どもたちにクリティカル・シンキングを身に付けさせるには、子どもの声に耳を傾けることが重要です」と述べて、ニュースについて子どもとよく話し合う機会を持つことが大切だとの見方を示しました。
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