サイエンス

普通の雷より1000倍明るい「スーパーボルト」とは?


通常の雷に比べ100倍も明るい雷のことを、「スーパーボルト」と呼びます。その中でも「通常の雷の1000倍も明るい」という、とりわけ強力なスーパーボルトの全容が、2つの研究により明らかとなりました。この研究により、強力なスーパーボルトが特に発生しやすい場所や、日本付近でスーパーボルトが起きるメカニズムなどの解明が進んでいます。

Geostationary Lightning Mapper (GLM) Observations of the Brightest Lightning in the Americas - Peterson - - Journal of Geophysical Research: Atmospheres - Wiley Online Library
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2020JD033378

Revisiting the Detection of Optical Lightning Superbolts - Peterson - - Journal of Geophysical Research: Atmospheres - Wiley Online Library
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1029/2020JD033377

Scientists Detect 'Superbolts' 1,000 Times Brighter Than Typical Lightning Strikes
https://www.sciencealert.com/study-finds-superbolts-shine-1000-times-brighter-than-typical-lightning-strikes

Lightning ‘Superbolts’ Are Real, Two New Studies Confirm | Geophysics, Geoscience | Sci-News.com
http://www.sci-news.com/othersciences/geophysics/lightning-superbolts-09083.html

世界気象機関(WMO)は2020年6月に、これまで観測されたことがある雷の長さの記録を大きく塗り替える「全長709kmの雷」についての観測記録を発表しました。この発表で示された雷は、それまで世界最長とされていた「全長321kmの雷」をダブルスコアで塗り替える非常に大規模なものだったと報告されています。

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こうした雷がどんな場所で発生しやすいのかを突き止めるため、アメリカ・ロスアラモス国立研究所(LANL)に勤めるマイケル・ピーターソン氏とエリン・レイ氏の研究チームは、気象衛星「GOES-16」に搭載されている観測装置「発光検知マッパー(GLM)」を使用した雷の観測を実施。2018年~2020年の2年間にわたり、静止軌道から南北アメリカの空を観測し、雷により発生した光を2ミリ秒(1000分の2秒)単位で記録しました。

その結果、通常の雷の100倍以上の光を発する「スーパーボルト」が200万回も発見されました。その一例が以下。2019年2月に発生したスーパーボルトは、約7秒間かけてアメリカ南東部の空に不気味な模様を描きました。なお、ここをクリックすると、スーパーボルトが発生する様子をアニメーションで見ることができます。


さらに、研究チームが観測対象を「通常の雷の100倍」から「1000倍」に引き上げると、ボリビア・ブラジル・パラグアイ・ウルグアイ・アルゼンチンにまたがるリオ・デ・ラ・プラタ盆地アメリカ中央部の2カ所で特に強力なスーパーボルトが頻発していることが突き止められました。

ピーターソン氏はこの研究結果について、「ある雷の放電では、通常の雷の数千倍にも及ぶ3テラワット超のエネルギーが観測されました。こうした極端な現象の理解を進めることは、雷の脅威を知る上で重要なことです」とコメントしました。

ピーターソン氏はさらに、LANLのマット・カークランド氏と共同で、南北アメリカを含めた世界各地で発生したスーパーボルトに関する研究を行いました。この研究でピーターソン氏らは、核実験監視衛星である「FORTE」が蓄積した過去12年間分の観測データを精査して100ギガワット以上の電力を生成した雷を抽出。地上からの観測記録と突合して、各スーパーボルトの特徴を調べました。


この研究の結果、スーパーボルトは普通の雷とは違った傾向を持つ雷だということが判明しました。通常の雷は、「マイナスの電荷を帯びた雲と地上の間の放電(-CG)」から発生するものが大半ですが、スーパーボルトの一部は「プラスの電荷を帯びた雲と地上の間の放電(+CG)」で発生していたとのことです。

2つ目の論文の中でピーターソン氏らは、「今回の研究により、100ギガワット程度の比較的弱いスーパーボルトは、-CGと+CGの両方のメカニズムで発生することが判明しました。しかし、350ギガワットを超えるような最も強力な部類のスーパーボルトは、特に日本の海岸付近で発生するような強力な+CGによって引き起こされていました」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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