サイエンス

雷に打たれると人はどうなるのか?


爆音や閃光(せんこう)とともに強い電気が流れる雷はいうまでもなく非常に危険な現象ですが、雷の直撃を受けても死なずに済んだ牛や、2度の落雷から生き延びたラッキーな男がいるなど、落雷によって必ずしも命を奪われるとは限りません。実際に雷の電流を受けた人の体では、いったいどのようなことが起こっているのでしょうか。

What Happens When You Get Struck By Lightning
https://gizmodo.com/5936361/what-happens-when-you-get-struck-by-lightning

雷は雷鳴が聞こえだした時点で何らかの対策を考えるべきとされるほど危険な存在とされています。一瞬で数億ボルト・数十万アンペアという強い電気が流れるため、直撃はおろか至近距離で落雷が発生するだけでも人や動物は命を落としてしまうことがあります。

そんな恐ろしい落雷ですが、世界には奇跡的に雷から生還した人もいます。以下のムービーに登場するウィリアム・ホールさんもそんな1人で、ガソリンスタンドで給油中に「電流が体の中を走った」とその時の様子を振り返っています。

Lightning Hits Man Caught on Tape - YouTube


中央に映っているジーンズ姿の男性が、ホールさん。ガソリンスタンドに併設された店舗で買い物を済ませたところです。


ホールさんが店を出た数秒後、店はカメラの映像が真っ白になるほど強い閃光に襲われました。


店外のカメラが捉えた落雷の瞬間。こんなところに人がいるとひとたまりもないと思ってしまうところですが、ここにホールさんはいました。


その時、セルフ給油機でガソリンを入れていたホールさんはヒザから崩れ落ち……


そのままバタリと倒れ、気を失ってしまったそうです。


その時の様子を語るホールさん。「最後に覚えているのは、オレンジ色の光の次に白い光が見えたことです。その後は目の前が真っ暗になり、意識が薄れていくのがわかりましたが、体に電気が走ったことは覚えています」と感電の瞬間を振り返ります。


どうやら雷は店舗そのものに落ちた様子で、ホールさんは直撃は免れた模様。すぐに周りの人が駆けつけてきましたが、5分間にわたって意識を失っていたそうです。それにしても、給油中のガソリンに引火しなかったのは不幸中の幸い。


人間の体は基本的に電気を通す「導体」です。そのおかげで脳と体の間で情報が送受信され、はたまた筋肉が電気刺激を受けて体の動きを作り出します。つまり人間を含む生き物は体に電気が流れないと生きていくことができないのですが、雷のようにあまりに強い電気が流れることは体に大きなダメージを与えることになります。

雷は、上空の雲の中でぶつかり合った氷の粒が静電気を持つことが原因で起こる現象です。雲の中でたまった静電気による電荷の量がある一定のラインを超えた時に、本来は電気を通さないはずの空気層の絶縁が破られ、地球の地面や水面に対して放電を行うことでたまった電荷を放出します。その際の電圧は数千万〜2億ボルト、電流は数万〜数十万アンペアで、電力に換算すると平均で900ギガワットというとてつもないものですが、数千分の1秒で放電が完了するために、人々の暮らしを支えるための電力源として活用することはほぼ不可能であると考えられています。


これほどまでに強い電気が流れる際に、その経路となる空気の分子は温度が数万度にも達してプラズマ状態にもなります。また、一瞬で温度が上がることで空気が音速を超えるほどの速さで急激に膨張して衝撃波を生じさせることで、あの雷の轟音が発生します。

この落雷が人体を通った時、大変なことになるのは想像に難くありません。一般的に、雷が人体を通過する時には頭に近い部分から地面に近い脚の一部を通ることが知られているのですが、この電気の入口と出口の周辺は、急激な空気の過熱によるやけどが発生するとのこと。またこの時、放電の衝撃で衣服や靴が吹っ飛んでしまうこともあります。さらに、電気が流れた皮膚の部分には、「リヒテンベルク図形」とも呼ばれる、まるで稲妻と同じような模様が残ります。

「雷が近づいてきたら、イヤリングやネックレスなど金属物を外せば危険が減る」といわれることがありますが、これは正しくないとされています。雷は、基本的に周囲のものよりも高いところに落ちるため、たとえ電導性が高い金属があってもそちらに引き寄せられることはありません。ただし、不幸にも体の近くや自分自身に雷が落ちた場合、電気を通しやすい金属に強い電気が流れることで発熱し、やけどの被害がひどくなることがあるので、むしろこの理由から金属類を取り外した方が良いといえます。その理屈でいうと、金属の棒を高く振り上げて行うスポーツ「ゴルフ」は雷との相性が非常に良くない行為であるといえます。

By Neville Wootton

仮に直撃を受けなくても、地面などを通じて雷の一部が人体に流れると影響が及ぶこともあります。その一つが、心臓の筋肉の動きに悪影響が出るという現象です。雷の強い電気が心臓とその動きをつかさどる神経に流れることで異常な電気刺激が心臓の筋肉に送られ、本来の動きで血液を送り出せなくなってしまうために人命が損なわれることもあります。

フランスの電力会社「フランス電力」のElisabeth Gourbière博士は「落雷による傷病は多岐に渡り、さまざまな症状が現れます」と述べています。さらに、最も危険で致死性の高いのは心臓および神経に関連する症状であるとも述べており、落雷を受けた人を助けるためには一刻も早く心肺蘇生術を行い、速やかに医療措置を受けることだけが、心肺停止状態にある被害者の命を救い、また呼吸停止による低酸素脳症による悪影響を軽減する方法であると説明しています。

By Rory Mizen

なお、落雷による被害を軽減する方法は、何よりもまず雷の直撃を食らわないことであるといえます。「背の高い木の下に逃げ込まない」「建物の軒下にも逃げ込まない」「水辺からは離れる」などの基本に加え、海外の学校などで指導される「雷しゃがみ」という方法を覚えておくと良さそうです。雷しゃがみとは、頭を下げてしゃがみ込み、つま先で立った状態にし、さらに両足のかかとをくっつけるというもの。姿勢を低くすることで落雷そのもののリスクを下げ、万が一地面から電気が流れてきたとしても、くっつけたかかとを通して地面に電気を戻すという考え方を取り入れた護身術です。

知らないと危険すぎる!落雷からの避難方法と必要な雷対策 | ケメ子のウェブログ

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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