「盗聴を許可する密約」がデンマークとアメリカの間で交わされていたことが判明
デンマーク当局の内部告発者により、デンマークの通信をアメリカが盗聴できるようにした協定の存在が暴露されたと報じられています。この報道により、2国の間で構築された盗聴のためのシステムには、かつて元アメリカ国家安全保障局(NSA)職員のエドワード・スノーデン氏がその存在を暴露した極秘システム「XKeyscore」が用いられたことも判明しました。
Et pengeskab på Kastellet har i årtier gemt på et dybt fortroligt dokument. Nu er hemmeligheden brudt
https://www.berlingske.dk/samfund/et-pengeskab-paa-kastellet-har-i-aartier-gemt-paa-et-dybt-fortroligt
Ny afsløring: FE masseindsamler oplysninger om danskere gennem avanceret spionsystem | Indland | DR
https://www.dr.dk/nyheder/indland/ny-afsloering-fe-masseindsamler-oplysninger-om-danskere-gennem-avanceret-spionsystem
Electrospaces.net: Danish military intelligence uses XKEYSCORE to tap cables in cooperation with the NSA
https://www.electrospaces.net/2020/10/danish-military-intelligence-uses.html
デンマークの日刊紙Berlingskeが2020年9月13日に、デンマークの防諜(ぼうちょう)機関であるForsvarets Efterretningstjeneste(FE)のスタッフから、「デンマークでの盗聴を可能にするNSAとFEの協定がある」との告発があったことを報じました。
報道によると、NSAは1990年代半ばに「デンマークの首都コペンハーゲンには、ロシアや中国との間で電話・電子メール・テキストメッセージを交わす回線が存在する」ことを突き止めたとのこと。この通信を傍受するにあたり、デンマークの協力が不可欠と判断したNSAは、当該回線にアクセスさせるようFEに要求しました。しかし、FEは当初アメリカ側の要求を突っぱねたとのこと。
そこでNSAは、当時首相だったポール・ニルップ・ラスムセン氏に改めて協力を要請しました。対米関係に積極的だったラスムセン氏が、この要求に合意したことで、デンマークとアメリカは情報提供に関する協定を結ぶ運びになったとのことです。
1997年7月に当時のアメリカ大統領ビル・クリントン氏がデンマークに表敬訪問したのも、この合意についてラスムセン氏に謝辞を述べるためだったといわれています。
盗聴の対象となった回線には国際的な通信が含まれているため、この協定は海外の諜報活動を管轄するFEの権限の範囲内だとされ、是非を巡る公の議論に付されることはありませんでした。Berlingskeによると、ラスムセン氏や当時のデンマークの国防相が署名した協定書は、対象となる回線を運営する民間の通信会社に見せられた後、FEの本部にある金庫に厳重に保管されたとのことです。
Berlingskeの報道に続き、デンマークの放送局であるDRは9月24日に、デンマークとアメリカの間に構築された盗聴用のネットワークが2008年以降に大幅に強化されたことを報じました。DRによると、FEの調達責任者が2008年に交代するのと同時に、NSAの職員が頻繁にデンマークを出入し、新しいシステムの導入を行ったとのこと。このNSAの職員は、コペンハーゲンのほど近くに新設されたデータセンターの構築でも中心的な役割を果たしたとされています。
DRは、この新しい「スパイシステム」のコード名をつかみましたが、「公表はできない」として情報を伏せました。その代わりDRは、新しいシステムにはNSAのXKeyscoreが使われていたことを明らかにしました。前述のFEの内部告発者が、「デンマークのデータが違法に収集された」と非難しているのも、このXKeyscoreを導入した新しいスパイシステムによるものだとされています。
以下の記事を読むと、スノーデン氏の暴露によりその存在が明らかになったXKeyscoreが、どのような規模で情報収集を行っていたのかが分かります。
NSAが国内最大手通信会社のネットワークを利用して極秘に情報収集を行っていたことが明らかに - GIGAZINE
Berlingskeによると、FEの内部告発者は「若いITスペシャリスト」とのこと。FEの一連のスキャンダルを取り上げたニュースブログ・Electrospacesは、思い切った内部告発を行ったFEの若い技術者について、「スノーデン氏を想起させます」とコメントしています。
内部告発者によって公のものとなったFEとNSAの協定や違法な情報収集について、デンマーク当局は調査委員会を発足させて事実関係の確認に乗り出しており、疑惑の全容については今後明らかになるものと期待されています。
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