「ファイブ・アイズ」によって国民のプライバシーが侵害される危険性はあるのか?
2020年8月14日、河野太郎防衛相がアメリカ・イギリスなど英語圏5カ国の機密情報共有枠組みである「ファイブ・アイズ」に参加意欲を示し、「日本も近づいて『シックス・アイズ』と言われるようになってもいい」と語りました。そんなファイブ・アイズによって脅かされる国民のプライバシーについて、プライバシー権に関する団体であるPrivacy Internationalのカーリー・ナイスト氏とアンナ・クロウ氏が2014年に指摘しています。
Unmasking the Five Eyes’ global surveillance practices | Global Information Society Watch
https://www.giswatch.org/en/communications-surveillance/unmasking-five-eyes-global-surveillance-practices
第二次世界大戦が終結した直後の1946年、アメリカとイギリスが10年以上にわたって継続してきた二国間の諜報協定である「United Kingdom - United States of America Agreement(UKUSA協定)」に、カナダ・オーストラリア・ニュージーランドも加わる形で、アメリカの国家安全保障局(NSA)、イギリスの政府通信本部(GCHQ)、カナダの通信保安局(CSEC)、オーストラリアの信号総局(ASD)、ニュージーランドの政府通信保安局(GCSB)の5機関による「ファイブ・アイズ」同盟が結成しました。ファイブ・アイズは「諜報に関する」という特性から存在自体が秘されており、長きにわたって公開文書などでは言及されませんでした。
ファイブ・アイズは緊密に結びついた同盟で、実行される作戦はどの諜報機関によって行われたのかがわからないほどに連携が行き届いているとのこと。さらに、ファイブ・アイズ参加国が保有する情報施設の多くは、自国だけではなく他の参加国のスタッフまで配置されることとなっており、情報施設の運営自体が共同化されているそうです。
ナイスト氏らによると、ファイブ・アイズは現代の通信ネットワークに対するあらゆる侵入方法を模索し、企業に対する顧客データの強要や、データセンター間の光ファイバーケーブルの盗聴、国際銀行間通信協会を介した金融データへのアクセス、データアクセスの規制するための国際協定の構築、暗号化団体および標準化団体への妨害活動によるインターネットの情報保護能力の低下など、あらゆる諜報作戦を行ってきたとのこと。
このようなファイブ・アイズの諜報活動の一端を明らかにしたのは、エドワード・スノーデン氏です。スノーデン氏は、ファイブ・アイズがイギリスの海底光ファイバーケーブル管理局を傍受する「TEMPORA」という作戦を行っていたと明かし、この作戦にイギリスのGCHQからは250人、アメリカのNSAからは300人が割り当てられたと語りました。
スノーデン氏によると、TEMPORA作戦によって傍受されたコンテンツは3日間、メタデータは30日間保存され、その保存期間にフィルタリングなどで重要情報を含むものだけが抽出されていました。TEMPORA作戦がスタートした直後はフィルタリングは単語検索などの基本的なものでしたが、あるときからはNSAの極秘監視システム「XKeyscore」が使われるようになったそうです。スノーデン氏はTEMPORA作戦について、「光ファイバーケーブに傍受用タップを設置して、通信データに単語認識や音声認識などを適用すると、遠隔通信およびオンライン通信のほぼ完全な制御を達成できる」と、その危険性を指摘しているとのこと。
第二次世界大戦以前では機密情報はファイルキャビネットなどに物理的に保管されていましたが、現代では機密情報がサーバーなどに保管され、オンラインから窃取することが可能です。ナイスト氏らはファイブ・アイズに加盟する5カ国の法制度には「ファイブ・アイズによって国民や居住者のプライベートコミュニケーションが傍受される可能性が想定されていない」と指摘。スノーデン氏が告発したように、ファイブ・アイズによる監視活動によって、国民のプライバシーが侵害される危険性があると述べています。
スノーデン氏は、「大量傍受技術は無差別監視技術といえるもので、特定の国や地域におけるあらゆる通信をコピーして監視するもので、通信を個別に傍受することはできない」と語っており、テロリストなどの犯罪集団の通信だけを抜き出して監視することは不可能だと言及。ファイブ・アイズが実施する監視網によって、同時に国民の情報までも侵害される危険性を指摘しています。
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