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Facebook・Twitter・GoogleのCEOがSNSを弱体化させる可能性がある「セクション230」の公聴会に出席、何が議論されたのか?


Twitterがトランプ大統領の発言に「誤解を招く可能性がある」とラベル付けしたことをきっかけに、SNS運営企業を法的に保護する「通信品位法230条(通称:セクション230)」が改訂される流れに進んでいます。2020年10月28日(水)、アメリカ上院のセクション230に関する公聴会にFacebook・Twitter・GoogleのCEOが出席し、議論や提案を行いました。

At Hearing, Republicans Accuse Zuckerberg and Dorsey of Censorship - The New York Times
https://www.nytimes.com/live/2020/10/28/technology/tech-hearing

The tech CEOs finally discussed Section 230 policy. Briefly. - Protocol
https://www.protocol.com/section-230-hearing/tech-ceos-finally-discussed-section-230

The Senate tech hearing on anti-conservative bias is really about helping Trump.
https://slate.com/technology/2020/10/senate-tech-hearing-zuckerberg-dorsey-pichai.html?scrolla=5eb6d68b7fedc32c19ef33b4

公聴会の映像は以下から見ることができます。

Senate Commerce Committee Hearing - YouTube


FacebookやTwitterといったSNSは人々の発言をプラットフォーム上で発信していますが、ユーザーが発信した内容に問題があっても法的責任を負いません。これはセクション230で「双方向通信を行うPCサービスのプロバイダーおよびユーザーは、別のコンテンツ提供者によって提供されたコンテンツの発行者または発信者としての責任を負わない」と定められているためです。セクション230はインターネットの自由を守る画期的な条項と評価されていますが、2020年5月にトランプ大統領はセクション230の見直しを含めた大統領令に署名を行いました

セクション230の変更により表現の自由が阻害されるおそれがあると懸念の声があがっていますが、10月16日には連邦通信委員会がルール作成を進める予定であると発表。

TwitterやFacebookの法的保護を制限する「セクション230の明確化」に連邦通信委員会が動き出す - GIGAZINE


10月28日にはFacebookのマーク・ザッカーバーグCEO、Googleのサンダー・ピチャイCEO、Twitterのジャック・ドーシーCEOが公聴会に出席し、セクション230の改訂について議論と提案を行いました。

現行のセクション230は、プラットフォームが「卑猥、わいせつ、下品、汚らわしい、過度に暴力的、嫌がらせ、あるいはその他好ましくないコンテンツを削除すること」に対する免責が定められています。この「その他好ましくないコンテンツ」の扱いが、今回の公聴会で注目されたとこと。シェリー・ムーア・カピト上院議員から「その他好ましくないコンテンツ」の定義について尋ねられたザッカーバーグCEOは「プラットフォーム上で行われる一般的ないじめやいがらせ」が含まれるとし、この文言が削除されることにより、プラットフォーム上で行われるいじめ行為を抑止できなくなるという懸念を示しました。この文言の維持は、3人のCEO全員が望むところであり、その重要性が強調されたとのこと。


また、ドーシーCEOは、セクション230の新しいあり方について、「企業がどのようなモデレーションを行っているかユーザーに提示し、ユーザーにコンテンツの見え方を変えるアルゴリズムを決めてもらう」という方法を提案しました。加えて、法の改定によっては、法に従うことができるだけの資金を持つ企業だけが優遇されることになるという懸念を示しました。


今回の公聴会で、ザッカーバーグCEOは民主党の標的となり、民主党議員からの質問21個のうち14個がザッカーバーグCEOに向けられました。一方でTwitterのドーシーCEOは共和党の主な標的となりました。Twitterは保守派の声を抑圧していると非難されることが多くあり、共和党議員からの質問25個のうち16個がドーシー氏に向けたものだったとのこと。なお、Googleは今回の公聴会において矢面に立つことを防げたそうです。


たとえば、民主党候補であるジョー・バイデン氏とその息子についての疑惑を報じた記事の拡散をTwitterとFacebookは制限しました。特にTwitterは記事が「ハッキングを通じて取得した個人情報を含む」として、ポリシー違反を理由に記事の共有を制限。これに対し共和党議員は「不当な検閲ではないか」と詳細の説明を求めました。

ただし、今回の公聴会は、セクション230の変更を主題としていながら、セクション230に関してはほとんど議論されていないという批判があります。GoogleやFacebookは独占禁止法違反の疑いがあり、SNSプラットフォームが政治的な主張を不当に扱っているという非難も高まっていることから、立法についての議論ではなく、そちらに質問が集中したためです。


また、言論の自由を専門とする法学教授のダニエル・キーツ・シトロン氏は「アメリカの民主主義にとっての脅威は『SNSによる検閲』ではなくて、『誤情報の拡散』です」「また、オンラインプラットフォームの言論の自由に対する検閲は存在しません」と述べ、公聴会の内容に対して批判的に論じています。

シトロン氏は2016年の大統領選でトランプ陣営が黒人の投票を抑圧するキャンペーンを実施していたことに言及しました。こような有権者抑圧は、ロシアのインターネット・リサーチ・エージェンシーが関わっていたことも判明しています。

2016年大統領選で黒人が投票しないようにトランプ陣営が広告キャンペーンを行っていたことが判明 - GIGAZINE


セクション230が改訂されることにより、プラットフォームが誤情報にラベル付けしたり、削除したりすることに対して、法的責任が課される可能性があります。これによりプラットフォームが誤情報拡散防止に消極的になれば、より国内外の分断や混乱が深まることになるとシトロン氏は指摘しました。

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