月額課金のサブスクリプション方式の成否は「ユーザーの解約率」だけでは正しく評価できない
月額の使用料を支払うことでソフトウェアのライセンスやウェブサービスを提供するサブスクリプション型サービスのビジネスは、契約者のうちで解約した者の割合である「解約率」を見ることで軌道に乗っているかどうかを判断できるといわれています。しかし、JavaScriptのエラー収集サービスであるCatchJSが「解約率だけではサブスクリプション型サービスを正しく評価できない」と、公式ブログで指摘しています。
You're all calculating churn rates wrong | CatchJS
https://catchjs.com/Blog/Churn
解約率は、一般的には「1カ月で解約したユーザー数÷月始の契約ユーザー数」で求められます。ベンチャーキャピタル会社のアンドリーセン・ホロウィッツは、サブスクリプション型サービスを提供するSoftware as a Service(SaaS)スタートアップを評価するための16の指標の1つとして、解約率を紹介しています。
例えば1カ月当たりの解約率がcである場合、顧客がnカ月間サブスクライブし続ける確率は(1-c)^nで計算できます。1カ月当たりの解約率が下がっていけば、ユーザーの契約持続月数は延びていき、サービスとして順調であると評価できるというわけです。
しかし、「契約して1カ月以内のユーザーの解約率」と「契約して12カ月以内のユーザーの解約率」が大きく異なるように、解約率は一定ではありません。また、「1カ月無料体験」などのサービスを展開している場合、解約率はもっと大きく変化します。そのため、解約率だけではサブスクリプション方式のSaaSが成功しているかどうかは単純に評価できないというのがCatchJSの主張です。
例えば以下のグラフは、1日当たりの解約率と経過日数をまとめたもの。平均の解約率(赤の点線)が徐々に下がっていることから、サービス改善によってユーザーのライフサイクルが延びているように見えます。
しかし実際は、1日当たりの新規登録者数と経過日数をまとめたのグラフを見るとわかる通り、新規登録者数は右肩下がりで減少していました。そのため、このサブスクリプション型サービスは、ビジネス的には確実に死にかけているといえます。
一方、以下のサービスは、右のグラフに表示されている1日当たりの解約率(赤の点線)は横ばいとなっていますが、左のグラフを見ると1日当たりの新規登録者数が爆増していることがわかります。解約率のグラフだけを見た投資家は、「サービス改善が行われていない」と非難するかもしれませんが、実際はサービスとして成長していることがわかります。
CatchJSは、「1カ月で解約したユーザー数÷月始の契約ユーザー数」で求められる解約率は、決してSaaSビジネスの評価指標としては完全ではないと主張しています。また、SaaSビジネスの健全性は「顧客をどれだけ長く維持できるか」ではなく、「どれだけの顧客を呼び込んだうえで維持できるか」によって決定されると述べました。
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