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サブスクリプション型アプリを販売する時のコスト・解約率・成長率・コンバージョン率の関係を実際の記録から分析するとこうなる

by DragonImages

「アプリを開発すること」と「アプリを売ること」は全く違うことであり、個人でアプリを開発する人にとってアプリ販売で利益を出すには困難が伴うことも多くあります。デベロッパ兼デザイナーであるジェームズ・ロング氏もサブスクリプション(定期購読)型のアプリ販売で現在進行形で右往左往していることから、経験者に助けを求め後進の役に立つべく、無料トライアルのコスト・コンバージョン率・解約率・成長率といったものの関係について、実際の記録を公開しています。

Analyzing churn rates, free trials, and other metrics
https://jlongster.com/analyizing-profit-metrics

ロング氏は2019年に「Actual」というサブスクリプションベースの財務アプリをリリースしました。アプリの開発自体はうまくいったのですが、開発者としての経歴しかないロング氏は、解約率や無料トライアルといったメトリクスの知識がないためににっちもさっちもいかなくなってしまったとのこと。


ロング氏にとって、Actualに無料トライアルを設定すること自体に抵抗はありませんでした。ただし、財務アプリのActualは取引を自動的にダウンロードするために銀行口座と同期する必要があります。ロング氏は、既存の銀行システムとデータをやりとりするAPIを提供するPlaidというサービスを利用していましたが、Plaidを使うと同期には口座ごと・1ユーザーあたり月額0.25ドル(約27円)がかかるとのこと。つまり、ユーザーが3つの口座と同期すれば、アプリは無料期間中なのに0.75ドル(約81円)をロング氏が払う必要があります。

大きな損失を生み出すことを恐れて同期機能の実装を遅らせたロング氏ですが、実際に「16カ月のサブスクリプションが行われた時のコストはどのくらいか?」ということを算出してみることにしました。

まず、計算に必要な各要素について、ロング氏は以下のように考えました。

・無料トライアルのコスト
無料トライアル期間の同期口座数を最大2口座に設定すると、1ユーザーあたりのコストは0.5ドル(約54円)となります。ただし、ユーザーはPlaidの支払い周期を2カ月ごとにする傾向があるため、30日のトライアルであってもロング氏は2カ月分の支払いを行う必要があるとのこと。

・コンバージョン率
アプリのトライアルユーザーがサブスクリプションに移行するコンバージョン率は、通常、ウェブサイトの来訪者のコンバージョン率よりも高くなります。ロング氏の調べではだいたい6%ほどになる見込みです。

・価格
Actualの場合、口座同期機能を含めたアプリのサブスクシプション価格は月額7ドル(約760円)に設定されました。

・成長率
ユーザーが毎月増加していく成長率を正確に計算するためのデータを、ロング氏は持っていないとのこと。そこで成長率は「だいたい5%ぐらい」と設定されました。本心を言えばより高いコンバージョン率を達成し、成長率をそれ以上に上げたいそうですが、予測値はあくまで「悲観的に」しているそうです。

◆コストによるマイナス
これらからコスト・収入・利益を割り出すと、こんな感じ。左列から月・新規無料トライアル・新規購読者・コスト・収入・利益となっています。


グラフにするとこうなります。一見すると損失しかないように見えますが、これは将来的な利益を考慮していないため。


初月には、126ドル(約1万3700円)を作り出すために174ドル(約1万8900円)を失っていますが、この損失はサブスクリプションの加入者が順調に増えれば1.38カ月で回収できることになります。また初月は18人の加入者を得るために300ドル(約3万2500円)を失っており、1加入者あたり16.67ドル(約1800円)の損失が出ているように見えますが、これも2.38カ月で回収可能。「2.38カ月はユーザーがアプリを使ってくれる」と考えるのは安全な賭けであるため、このグラフを見てロング氏は「思ったほど悪くない」という感想を抱いたそうです。

◆定期購読による利益
次に、定期的なサブスクリプションが行われた場合を考慮してみます。利益を計算する際には「新規サブスクライバー」ではなく「合計サブスクライバー」に基づいた計算を行います。

上記のスプレッドシートに「総購読者」「収入」「利益」という要素を加えるとこんな感じ。3カ月目で利益のマイナスがプラスに転じ、16カ月後には月額2355ドル(約25万5000円)を得ている計算になります。


グラフにするとこうなります。青いグラフがコスト、赤いグラフが収入、オレンジのグラフが利益です。


◆解約率
上記のデータは「ユーザーが絶対に離れない」ことを前提としていますが、解約率も考慮すべき重要な要素の1つ。ロング氏は「正確な数値を取得するための十分なデータはまだ得られていない」としつつも、解約率を7%、つまり新規購読者15人につき1人が解約すると仮定しました。

解約率を考慮するとスプレッドシートはこうなり……


グラフはこんな感じに。解約率を考慮すると16カ月後の月間利益は1338.4ドル(約14万5000円)になり、解約率を考慮する前と比べて10万円程度少なくなりました。


◆最初の1カ月の無料分を考慮
最初のスプレッドシートは加入者がすぐに定期購読者となり支払いを行う計算だったため、ここでスプレッドシートが微調整されています。同様に、その月の新規加入者からの利益は無視する必要があるため、利益の計算には「先月末の総加入者」を使う必要があるとのこと。ということで、計算しなおすとこんな感じ。16カ月後の月額利益は1204.70ドル(約13万円)に修正されました。


◆加入者の月額料金
さらに、新規加入者だけではなく全ての加入者に、口座同期のコストがかかることを思い出したロング氏は、ここでさらに調整。またPlaidは最低支払い価格を月額500ドル(約5万4200円)としており、たとえ使用料が125ドル(約1万3600円)であっても500ドルを払う必要があります。この点についてもロング氏は調整を行いました。


グラフはこう。16カ月後の月額収入は1008.80ドル(約11万円)に修正されました。


◆楽観的になってみる
コンバージョン率を6%から9%に上げ、解約率を7%から6%に下げた場合、利益は急増して2395.7ドル(約26万円)に跳ね上がります。


◆月額1万ドル(約110万円)に到達するには何が必要か?
「16カ月以内に月額110万円に到達するには成長率を上げればいい」と考えがちですが、実際には、6%のコンバージョン率、獲得コスト16.6ドル(約1800円)、7%の解約率、1トライアルあたり1ドルで計算すると、20%まで成長率を上げた時に大金を失うことになってしまいます。ロング氏はこの現象をまだ数学的に理解していないとのことですが、「成長のために多額を投資するのではなく、トライアルのコストを下げたり、価格を上げたりすることが方法として考えられる」と述べました。

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in ソフトウェア, Posted by logq_fa

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