新型コロナの重症化リスクを増加させる「ネアンデルタール人のDNA」の詳細な分布が判明
2020年7月に発表された研究により、ネアンデルタール人の遺伝子が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化を招いている可能性があることが判明しました。この時特定されたネアンデルタール人由来の遺伝子を持つ人々を、さらに広範に調べた新たな研究により、新型コロナウイルス感染症が重症化する危険因子を持つ人の詳細な分布が明らかになりました。
The major genetic risk factor for severe COVID-19 is inherited from Neanderthals | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2818-3
新型コロナの重症化はネアンデルタール人から受け継いだ | 沖縄科学技術大学院大学 OIST
https://www.oist.jp/ja/news-center/press-releases/35499
スウェーデンにあるカロリンスカ研究所の神経学者であるHugo Zeberg氏と、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所に勤めるSvante Pääbo氏は2020年7月に、「現代人の第3染色体に存在するネアンデルタール人の遺伝子が、COVID-19の重症化と関係が深い」ことを発表。かつて、別の感染症に対する免疫を強めるのに有利な働きをしていたとされるネアンデルタール人の遺伝子が、皮肉にもCOVID-19を重症化させていることを明らかにしました。
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by Erich Ferdinand
COVID-19を重症化させるネアンデルタール人由来のDNAを特定したZeberg氏らは次に、遺伝的多様性を調べる国際的プロジェクト「1000人ゲノムプロジェクト」から、問題のDNAの分布を調べました。
その結果を地図に表したものが以下。円グラフはその地域に住んでいる、COVID-19の重症化リスクとなるネアンデルタール人の遺伝子を持っている人の割合を示しています。
この結果について、Pääbo氏は「この地域に見られたネアンデルタール人の遺伝子は、現代では存在しない他の感染症からネアンデルタール人を守った可能性があります。そして、私たちがCOVID-19に直面している今、これらのネアンデルタール人の遺伝子は悲劇的な結果をもたらします」と話しました。
また、Zeberg氏らは論文の中で、「ネアンデルタール人の重症化リスク遺伝子は、南アジアでは約30%の人が保有しているのに対し、東アジアにはほとんど見られないのは印象的です」と指摘しています。特に、バングラデシュは重症化リスクが高い遺伝子を持つ人の割合が最も高く、人口の約63%が問題の遺伝子の保有者とのことです。
Zeberg氏は、「我々が特定したネアンデルタール人由来のCOVID-19重症化リスク因子をもつ人は、COVID-19に感染した際に人工呼吸機を必要とするリスクが3倍になります。もちろん、年齢や他の疾病も重症化に影響を与えますが、遺伝的要因としてはこの遺伝子が最も強い要因です」と結論付けました。
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