AI超えの顔認識技術を生まれつき持つ特殊能力者「スーパーレコグナイザー」とは?
監視カメラの映像をAI技術で分析して人々の動きを追跡する「顔認証」のシステムは、セキュリティや犯罪捜査などの面でめまぐるしい発展を見せています。一方で、自動顔認証システムはまだ初期段階にあり、ほとんどの場合で人間が作業を行っていると言われます。そのような中で、顔認証の精度を高めるために、「スーパーレコグナイザー」と呼ばれる特殊な能力を持つ人々が活躍する例があります。
How Police Are Using 'Super Recognizers' Like Me to Track Criminals
https://www.vice.com/en_us/article/ep487p/how-police-are-using-super-recognizers-like-me-to-track-criminals
中国は「全てを監視するAIシステム」に力を入れていたり、一方でアメリカではプライバシーの観点から顔認証技術の使用禁止を政府機関から求められたりとさまざまですが、技術が発展していく一方で、いまだ多くの国が最後の判断は人間に任せるという形を採っています。そんな中、人々の顔を正確に見分ける類いまれな能力を持つ人が、映っている人の角度や映像の粗さにかかわらず見分けられるように力を発揮しているケースもあります。
by terrykimura
「スーパーレコグナイザー」という用語は2009年に生まれたもので、出会った人々の80%以上を記憶している人を指します。平均で20%しか記憶できないとされる中で、チラッとすれ違った人ですらはっきり見分けられるほどの能力があり、神経メカニズムはほとんど判明していない遺伝的なそのスキルは、人口の1%しか持っていないそうです。
多くの国の警察がこのスーパーレコグナイザーを採用していると言われています。海外メディアVICEが紹介しているケリー・ハーシー氏はそのような特殊な能力を持つ1人で、殺人事件の捜査からスポーツイベントの入場客チェックまで、警察に協力しながら能力を発揮しているそうです。スーパーレコグナイザーの仕事の実体や、そのような超能力を有している日常生活はどのようなものなのかなどについて、VICEがハーシー氏氏にインタビューをしています。
VICE:
ハーシーさんは2018年にテストを受け、600万人以上の候補者からこれまでにない最高のスコアを獲得しています。ハーシーさんが最初にテストを受けたいと思ったきっかけは何ですか?
ハーシー氏:
人の顔を認識するのが得意というのはずっと思っていました。6歳のころに会ったきりの友達の妹のことを、30年後に見かけてはっきり認識したり、肩越しにチラッと見ただけで人の顔を認識できたり、というような経験がありました。そのため、テストを受けてみることが楽しみだったのです。
VICE:
ただ顔を認識するというだけではなく、記憶の中と結び付けてその顔が誰かを判断しているということは、記憶能力でも優れているということですか?
ハーシー氏:
はい。私たちの調査に役立つ一番の理由は記憶能力の方です。じっくりと座って顔の特徴を認識する必要はなく、誰かの顔を数秒間見るだけで記憶に刻まれます。それは不気味でもあり、寒気を感じることもあります。
VICE:
記憶と顔認識はいつも正確ですか?
ハーシー氏:
はい、100%です。「私の古い仕事仲間かもしれない」というような曖昧な状況はなく、しっかりはっきりとした感覚です。
VICE:
自身にスキルがあるとわかった後に、それを生かすためのトレーニングは必要でしたか?
ハーシー氏:
Super Recognizers Internationalの基準に従い、法律と行動分析について学ぶトレーニングコースがあります。それを身に付けてオペレーションをこなしていきます。
VICE:
レコグナイザーとしての最初の仕事は何でしたか?
ハーシー氏:
1つは殺人事件の捜査でした。幸い、私は犯罪ドキュメンタリーがとても好きで、その影響で捜査にあたって何を警察に尋ねればよいかということを理解していました。私の活動によって新しい証拠を発見することができたこともあり、その後も注目を集める3件の殺人事件で捜査を行ってきました。私たちが配備されたときに、必ずしも対象者を見つけられるわけではありませんが、目の前を通り過ぎたことは一度もありません。
VICE:
お仕事の内容を聞いていると、「ウォーリーを探せ」の巨大なゲームにも感じますが、仕事していて楽しい部分もありますか?
ハーシー氏:
そうですね。時々、夢じゃないかと頬をつねることがあるくらい、素晴らしい夢の中にいると興奮しています。
VICE:
あなたが取り組んだ、最も注目度が高い事件について教えてください。
ハーシー氏:
全国的なテレビでも非常に注目度の高かった、殺人事件に取り組みました。逮捕された男に関して、その事件がどのように計画されたのか、何をしていたのかを警察は知りたがっていました。私は住宅街や街路からの映像を見て、殺人が起こる4日前から容疑者を追跡しました。映像の中で、捜査では分かっていなかった凶器の所在について、どこから持ち込まれたのかを発見しました。これにより、容疑者の罪状についての証拠を警察は手にしたのです。
VICE:
仕事以外の日常生活にどのような影響がありますか?
ハーシー氏:
ショッピングモールでは、他の人と同じように買い物するのがとても大変です。もしあなたが誰かを見かけて、また同じ人を繰り返し見かけていたら、「ストーキングされている!」と思ってしまうでしょう。でも、同じ建物にいるというだけなのです。自分が何を見て何を感じているかを理解してからは、それほど心配することはなくなりました。
VICE:
最後に、レコグナイザーとしての最終目標などについて一言お願いします。
ハーシー氏:
読者の中に私のような人がいたら、オンラインテストを受けてみてほしいです。Super Recognizers Internationalという協会のウェブサイトには、そのような人たちにとって興味深い情報がたくさんあります。合格者に実施されるコースもありますので、ぜひ参加してみてください。
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