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「顔認識技術の使用禁止」を政府内の監視機関が警察など法執行機関に要求

by IBM Research

2020年1月、Clearview AIという新興企業による大規模な顔認証アプリが、連邦捜査局(FBI)をはじめとする多数の法執行機関によって利用されているとニューヨーク・タイムズによって報じられました。これを受けて、アメリカ政府内に設置されているプライバシー・市民的自由監視委員会(PCLOB)が、政府に対して顔認証技術の使用を禁止する圧力をかけています。

The Secretive Company That Might End Privacy as We Know It - The New York Times
https://www.nytimes.com/2020/01/18/technology/clearview-privacy-facial-recognition.html

Government privacy watchdog under pressure to recommend facial recognition ban | TheHill
https://thehill.com/policy/technology/480152-government-privacy-watchdog-under-pressure-to-recommend-facial-recognition


ニューヨーク・タイムズによると、オーストラリアのエンジニアによって設立されたClearview AIという新興企業が、FBIやアメリカ合衆国国土安全保障省、地元の警察機関を含む数百もの法執行機関に対して、画期的な顔認識アプリを提供しているとのこと。

Clearview AIが提供する顔認識アプリは、人物の顔写真をアップロードすると大量のデータベースから該当する顔を探し、一致した画像と出典元のウェブサイトへのリンクを表示するというもの。データベースに登録された30億枚以上の画像は、FacebookやYouTube、その他数百万ものウェブサイト上から取得されたとのことで、リンク先のウェブサイトから人物の名前やその他の個人情報を掘り出すことが可能とみられています。

以前からFBIなどが顔認識技術を犯罪捜査に用いていることは知られていますが、Clearview AIが提供するデータベースは、「アメリカ政府やシリコンバレーの企業が構築したものよりはるかに大きい」と、ニューヨーク・タイムズは指摘。すでにClearview AIを用いて万引きや個人情報の窃取、クレジットカード詐欺、殺人、児童の性的搾取事件などの犯人が検挙されていると、連邦や州の法執行官は証言しているそうです。

by stevanovicigor

そんな中、法執行機関によるClearview AIのアプリ使用について、アメリカ政府内の監視機関であるPCLOBは政府へ顔認識技術の使用停止を求めているとのこと。政府へ送った書状の中には、「顔認識技術の急速で無秩序な展開は、私たちの生活にとって不可欠である貴重な自由への直接的な脅威をもたらします」と述べられています。また、PCLOBは顔認識技術が内包する年齢・性別・人種によって精度が悪化する問題についても指摘しました。

2004年に設立されたPCLOBは、アメリカ人のプライバシーに影響を与える技術とポリシーを評価し、大統領および行政府に勧告する独自の責任を負っています。今回のClearview AIに関する勧告について、PCLOBはコメントしませんでした。

by Sheila Scarborough

アメリカではいくつかの市町村で、政府職員や警察による顔認識技術の使用が制限されていますが、連邦法として顔認識技術に関する制限は設けられていません。顔認識技術を問題視する動きは広まりを見せつつあり、アメリカ合衆国下院監視・政府改革委員会も、顔認識技術に関する公聴会を2020年1月に開催しています。

委員会のメンバーであるCarolyn Maloney議員は、顔認識技術は依然として準備不足だと指摘し、「顔認識技術は個人の自由と権利に深刻な影響を与えます」とコメント。また、同じく委員会メンバーのJim Jordan議員は、「私たちは何が起こっているのかを把握しようとしている最中です。まずは問題を拡大しないようにしましょう」と主張し、顔認識技術の使用を一時停止する法案が起草されていると述べました。

顔認識技術を危険視する動きはアメリカに限ったものではありません。欧州連合(EU)では駅やスポーツスタジアム、ショッピングセンターなどの公共の場において、顔認識技術の使用を一時的に禁止することを検討していると報じられています。

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in ソフトウェア, Posted by log1h_ik

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