ロンドンの警察は誤検知率98%の顔認識システムで大衆を監視している
by PhotoMIX Ltd.
イギリスでは地方警察のいくつかでは、大衆の顔と犯罪容疑者の顔をマッチさせる顔認証システムを採用した監視カメラが用いられています。しかし、このシステムの誤検知率は98%にのぼっており、警察は「多くの逮捕に結びつくとは考えていない」にも関わらず使用を続けているという状況となっています。
London's top cop isn't expecting facial recog tech to result in 'lots of arrests' • The Register
https://www.theregister.co.uk/2018/07/04/met_police_commish_im_not_expecting_facial_recognition_tech_to_result_in_lots_of_arrests/
London police chief ‘completely comfortable’ using facial recognition with 98 percent false positive rate - The Verge
https://www.theverge.com/2018/7/5/17535814/uk-face-recognition-police-london-accuracy-completely-comfortable
イギリスには300万台以上の監視カメラが設置されており、「監視カメラ大国」と呼ばれることも。いくつかの地方警察は監視カメラの映像をAIに顔認証させ犯罪容疑者を見つけ出すシステム(自動顔認識システム/AFR)を採用していますが、「精度に疑問が残る」という点と「運用の透明性に欠ける」という点がかねてから批判されていました。
イギリスの警察で運用される自動顔認証システムは「極めて不正確な精度で運用も不透明」と批判の声 - GIGAZINE
ロンドンもAFSを採用しテストしている場所のうちの1つです。ロンドン警視庁はコンサートやお祭り、サッカーの試合など、人が多く集まるイベントでモバイル監視カメラを起動させ、群衆を捉えて犯罪容疑者の顔と一致するかどうかをテストしているとのこと。
by FirmBee
しかし、顔認識はそもそも、空港などの管理された環境で効果を発揮するものであり、人々が野放しの状態にある環境では利用が難しいとされています。イギリスの情報公開法のもとで発表されたデータは、ロンドン警視庁が使用するAFSは98%の誤検知率を有することを示しています。これは、AFSが「犯罪容疑者とマッチした」と示す人は、98%の確率で間違いであることを意味しています。
AFSがこれまでに正しく検知できたのは2件で、うち1件はすでに時効を迎えている人に対するもので、もう1件は精神的な問題を抱え著名人と接触を図ろうとする人だったため、いずれも逮捕にはつながりませんでした。
イギリスのテクノロジー系メディア・The Registerによると、ロンドン警視庁の警視総監であるCressida Dick氏は、AFSが「多くの逮捕に結びつくとは考えていない」としつつも、「人々は法施行機関がこのような最先端のシステムをテストすることを期待している」と述べたとのこと。
AFSは十分な議論が行われておらず、適切な調査をへていないにも関わらずに警察に採用されており、パブリックスペースを生体認証の検問所に変える恐れがあるともいわれています。これが抗議行動を行うことへの萎縮効果をもたらすことも、十分考えられるとのこと。
ビッグ・ブラザーもかくや、という状況はイギリスだけではありません。アメリカではAmazonが自社開発した顔認識ソフトウェアを、少なくとも2つの州の法執行機関と警察用ボディカメラ製造会社などに販売しているという状況が報じられています。
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