Appleは独自のゲームサブスク「Apple Arcade」の新規タイトルをキャンセルして既存ユーザーを維持する戦略にシフト
100以上のタイトルに無制限にアクセス可能なApple独自のゲームサブスクリプションサービスが「Apple Arcade」です。AppleはApple Arcadeに続々新規タイトルを追加すべくゲームデベロッパーと契約を結んでいますが、一部の新規タイトルをキャンセルし、既存のユーザーをサービスに留まらせるための戦略に移行したとBloombergが報じています。
Apple Cancels Arcade Games in Strategy Shift To Keep Subscribers - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-06-30/apple-cancels-arcade-games-in-strategy-shift-to-keep-subscribers
Bloombergが関係筋から得た情報によると、Appleは2020年初めに複数のゲームスタジオとの間で結んでいた新規タイトルの開発契約を破棄し、新しいアプローチを取ることを発表しました。2020年4月中旬、Apple Arcadeのクリエイティブプロデューサーを務める人物は、一部の関係者に対して「(契約を破棄したゲームタイトルは)Appleが求めるエンゲージメントのレベルになかった」と話したそうです。Appleは既存のサービス加入者を維持できるようなタイトルを求めており、無料の試用期間を超えてサービスに料金を支払ってくれることにつながるようなタイトルを模索しているとのことです。
Apple Arcadeは2019年9月20日からサービスを開始した、月額600円でiPhone・iPad・Apple TV・MacといったApple端末でゲームがプレイし放題になるサブスクリプション型のゲームサービス。100種類以上のゲームが収録されており、日本のセガやカプコンといったゲームメーカーのタイトルも含まれています。
月600円で追加課金なし・プレイし放題な「Apple Arcade」のゲームタイトル一覧まとめ - GIGAZINE
Apple Arcadeの特徴は他の多くのモバイルゲームとは異なり、煩わしい広告が存在せず、pay to win要素も存在しないためゲームをプレイするために追加でお金を支払う必要がないという点です。広告&pay to win要素なしというアプローチは「多くのゲーム批評家から賞賛されました」とBloomberg。
Apple Arcadeには毎月新しいタイトルが加えられていますが、既存のタイトルはどれも大ヒットとは言い難い状況です。また、ある開発者はAppleがApple Arcadeの戦略を変更したことは、Apple Arcadeの加入者数の伸び悩みを表すものかもしれないと指摘しています。なお、AppleはApple Arcadeのユーザー数などを明らかにしていませんが、2020年に入って無料の試用期間を1カ月から2カ月に延長しました。
AppleはBloombergに対して「Apple Arcadeはゲームサービスの可能性を再定義し、加入者とその家族のすべてのApple端末で無制限にゲームをプレイできるようにしました。120以上のゲームを特徴とする史上初のモバイルゲームサブスクリプションサービスを開始できたことを誇りに思っています。そして、Apple Arcadeの収録タイトルの多くは芸術性と品質の両方で広く賞賛されています。我々のビジョンは常にApple Arcadeの収録タイトルを成長・進化させることであり、開発者が現在取り組んでいるゲームをユーザーがプレイできるようになる日が待ち遠しいです」という声明を出しています。
加えて、AppleはApple Arcade加入者のフィードバックに基づき、配信タイトルのラインナップに常に変更を加えることを計画しているとも述べました。
なお、情報筋によるとAppleはこれまでにApple Arcade収録タイトルの開発をサポートするために数千万ドル(数十億円)規模の投資を行っており、いくつかのタイトルに対しては100万~500万ドル(約1億1000万~5億4000万円)もの資金を投じてきたとのこと。また、2019年4月には「AppleはApple Arcadeに500億円以上を投じている」という報道もありました。
Appleは500億円以上を新型ゲームサービスの「Apple Arcade」に投入している - GIGAZINE
Appleに突如契約を破棄された開発者の中には、新型コロナウイルスのパンデミックの影響もあり、突然の財政難に直面するケースもあったとのこと。ただし、Appleは契約を破棄したものの、ゲームデベロッパーが達成したマイルストーンに基づき、スタジオ側に報酬の支払いを行っているそうです。加えて、Appleは同社が求める要件を満たすタイトルであれば、将来的に契約を破棄したデベロッパーと再び協力する用意があると語ったそうです。
なお、あるゲームデベロッパーによると、Apple Arcadeの担当者は2020年4月に同社が求めるゲームの具体例として、多くのレベルを持つ魅力的なパズルアクションゲームの「Grindstone」を挙げたそうです。
GRINDSTONE - A Puzzle-Battle Splatter-Fest! - YouTube
AppleはiPhoneやMacといったハードウェアの販売だけでなく、Apple Arcadeのようなサービス分野でより多くの収益をあげることを目指しています。そして、Appleのサービス部門は同社において最も急成長を見せる分野のひとつです。2020年度第2四半期(1~3月)のAppleのサービス部門の売上高は過去最高の134億ドル(約1兆4400億円)を記録しており、これは総売上の約23%を占めています。
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