新型コロナウイルスによって排出量が減少したにもかかわらず大気中の二酸化炭素量が観測史上最高を記録
世界中で流行している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け、各国で都市封鎖や経済活動の停止といった措置が執られた結果、世界の二酸化炭素排出量が前年比で17%も減少したことが報じられています。ところが、スクリップス海洋研究所およびアメリカ海洋大気庁(NOAA)の測定結果から、2020年5月には大気中の二酸化炭素量が観測史上最高値を記録したことが判明しました。
Rise of Carbon Dioxide Unabated | Scripps Institution of Oceanography, UC San Diego
https://scripps.ucsd.edu/news/rise-carbon-dioxide-unabated
Rise of carbon dioxide unabated - Welcome to NOAA Research
https://research.noaa.gov/article/ArtMID/587/ArticleID/2636/Rise-of-carbon-dioxide-unabated
‘Like Trash in a Landfill’: Carbon Dioxide Keeps Piling Up in the Atmosphere - The New York Times
https://www.nytimes.com/2020/06/04/climate/carbon-dioxide-record-climate-change.html
Carbon dioxide levels hit highest mark in human history, despite coronavirus - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/weather/2020/06/04/carbon-dioxide-record-2020/
スクリップス海洋研究所とNOAAの研究チームは、ハワイ島にあるマウナロア観測所で測定されたデータから、「2020年5月の大気中の二酸化炭素量が417ppmを突破し、観測史上最高値を記録した」と発表しました。2019年5月には大気中の二酸化炭素量が415ppmを記録していましたが、今回の発表は去年の記録を2ppm以上も上回る結果となっています。
二酸化炭素は主要な温室効果ガスであり、気候変動を食い止めるためには大気中の二酸化炭素量が増加するのを止めることが急務です。しかし、産業革命以前はおよそ280ppmで安定していたものの、世界中で産業が発達して人口が増加するにつれて大気中の二酸化炭素量も増加しており、2010年代には400ppmを突破。1960年代には1年当たり0.8ppmのペースで大気中の二酸化炭素量が増加していましたが、2010年以降は1年当たり2.4ppmのペースで増加しているとのこと。
by Scripps Institution of Oceanography
COVID-19のパンデミックによって世界中で二酸化炭素排出量が減少したと報じられているにもかかわらず、大気中の二酸化炭素量が過去最高を記録したことは不自然に思われるかもしれません。しかし、スクリップス海洋研究所のRalph Keeling教授は、「二酸化炭素の蓄積は埋め立て地のゴミのようなものです。私たちが放出し続けると、それは蓄積し続けます。COVID-19の危機によって二酸化炭素排出量は減少しましたが、それはマウナロア観測所のデータに現れるほどではありません」と述べています。
なお、大気中の二酸化炭素量は人間の活動だけでなく、植物や海洋の季節的な活動によっても変動します。例年5月に年間の最高値を記録するのも、北半球の秋~春にかけて植物や土壌から二酸化炭素が放出され、夏になると植物が二酸化炭素を吸収し始めるというサイクルが大きな原因となっているそうです。
スクリップス海洋研究所の科学者らは、地球上の大気中の二酸化炭素量が417ppmを突破したのは数百万年ぶりだと指摘してしています。かつてこのレベルの二酸化炭素が大気中に存在していた時代は、平均気温が現代よりも2~3度ほど高く、海水面も15m~24mほど高かったとのこと。
NOAAの科学者であるPieter Tans氏は、「十分に理解されている物理学は、温室効果ガスの増加が地球の表面を加熱し、氷を解かし、海水面を上昇させていることを私たちに伝えています。温室効果ガス、特に二酸化炭素の量が増加するのを止めなければ、地球の大部分が居住不可能となってしまうでしょう」と警告しました。
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