サイエンス

新型コロナウイルスの影響で中国の二酸化炭素排出量が減り「環境には好影響」という指摘


中国・武漢から世界中に広まりつつある新型コロナウイルスの流行を抑えるため、中国をはじめとする各国は必死に封じ込め政策を行っています。人の移動や活動を制限する封じ込め政策は産業活動にも大きな影響を与えており、フィンランドの独立研究機関であるCentre for Research on Energy and Clean Air(CREA)が発表した研究により、「新型コロナウイルスの影響で中国の二酸化炭素排出量が大幅に減少している」ことが判明しました。

Analysis: Coronavirus has temporarily reduced China’s CO2 emissions by a quarter
https://www.carbonbrief.org/analysis-coronavirus-has-temporarily-reduced-chinas-co2-emissions-by-a-quarter

Coronavirus outbreak slashes China carbon emissions: study | AFP.com
https://www.afp.com/en/news/826/coronavirus-outbreak-slashes-china-carbon-emissions-study-doc-1p40gg1

Coronavirus Cuts China's Emissions by 100 Million Tons | Time
https://time.com/5786634/coronavirus-carbon-emissions-china/


2019年12月に人間への感染が確認された新型コロナウイルスは、依然として中国・湖北省を中心に猛威を振るっており、記事作成時点での感染者数は7万4000人超、死亡者数も2000人を超えています。

新型ウイルス 中国 新たに108人死亡 死者は2112人に | NHKニュース


そんな中、中国政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑える目的で春節休暇の延長を実施し、中国国務院によって春節休暇期間が2月2日まで延長されました。さらに、上海市や浙江省、江蘇省、広東省、山東省など多くの地域で春節明けの操業再開時期が2月10日以降と決められるなど、中国政府は「産業に影響を及ぼすとしても感染の拡大を抑える」という姿勢を見せています。

そんな中、CREAの研究チームが2020年2月19日に発表した研究によると、2020年2月3日~16日の2週間における中国の二酸化炭素排出量は3億トンだったそうです。2019年の同時期における二酸化炭素排出量は4億トンだったとのことなので、前年比で1億トンも減少したということになります。1億トンという二酸化炭素排出量は、南米のチリが1年間に排出する二酸化炭素の量に近く、同期間における世界全体の二酸化炭素排出量の6%に相当するとのこと。


例年、中国では春節の期間に多くの店舗や建設現場などが閉鎖され、春節前後と比べて産業部門全体からの二酸化炭素排出量は減少しますが、2020年はさらに新型コロナウイルスの流行によって春節期間の延長が行われました。「新型コロナウイルスを封じ込める措置により、主要産業部門全体における生産量が15~40%減少しました。この生産量減少が、過去2週間で二酸化炭素排出量が25%減少したことにつながった可能性があります」と、研究チームは述べています。

以下のグラフが、春節の前後における石炭火力発電所の石炭消費量を示したもので、横軸が「0」の地点が春節の初日となっています。青い線が示すように、例年は春節開始から7~10日ほどが経過すると石炭消費量が増え始めますが、赤い線が示すように、2020年は春節開始から3週間が経過しても石炭消費量が回復していません。


2020年2月3日からの2週間で、発電所の石炭消費量は過去4年間で最も低下し、2月16日になっても回復する兆しを見せていません。同様の傾向は石炭火力発電所以外の幅広い産業分野にも見られ、政府によって1週間延長された春節の休暇期間が終了した2月10日を過ぎても、産業指標は上昇するどころかむしろ低下しているとのこと。

また、国際エネルギー機関石油輸出国機構の分析によると、新型コロナウイルスの流行によって2020年1月~9月の石油需要が最大で0.5%減少することが示唆されています。

以下の画像は、化石燃料の使用と密接に関わる大気汚染物質の二酸化窒素を衛星から観測し、地図上で二酸化窒素濃度を色で示したもの。2019年の観測と比較すると、2020年は春節期間が終わっても二酸化窒素濃度が減ったままであることがわかります。


また、中国や周辺国のウイルス封じ込め策の影響により、航空便の運行にも大きな影響が出ています。2020年2月の2週間で中国発の海外便における乗客数が50~90%減少し、国内便も60~70%の乗客数低下が報告されています。乗客数の低下によるフライトのキャンセルなどにより、旅客便からの二酸化炭素排出量は2週間で11%も減少したとのこと。

by Alan Wilson

研究チームは中国の二酸化炭素排出量が減少したことについて、あくまでも一時的なものである可能性が高いとみています。新型コロナウイルスの流行が収まった後で中国政府や企業が生産の遅れを取り戻そうとすれば、二酸化炭素排出量は元に戻るばかりか、例年よりも増加する可能性もあると研究チームは指摘しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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