サイエンス

新型コロナウイルスの影響で世界の二酸化炭素排出量が前年比で17%減少、2006年とほぼ同水準まで低下したと判明


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を防ぐため、各国は都市封鎖や不要不急の経済活動の停止といった措置を執っています。こうした動きにより、中国イタリアインドなどで大気汚染が激減していることが報告されていますが、「COVID-19のパンデミックで2020年4月の二酸化炭素排出量が前年比で17%も減少し、2006年と同レベルにまで低下した」とイギリスの研究チームが発表しました。

Temporary reduction in daily global CO 2 emissions during the COVID-19 forced confinement | Nature Climate Change
https://www.nature.com/articles/s41558-020-0797-x

COVID-19 crisis causes 17% drop in global carbon emissions - News - UEA
https://www.uea.ac.uk/about/-/covid-19-crisis-causes-17-drop-in-global-carbon-emissions

The COVID-19 pandemic cut carbon emissions down to 2006 levels - The Verge
https://www.theverge.com/2020/5/19/21262259/greenhouse-gas-emissions-carbon-drop-climate-change-coronavirus


研究チームは世界の二酸化炭素排出量のうち97%を占める69カ国について、政府がCOVID-19の感染拡大を抑える方法について分析しました。各国で感染抑制政策がピークだった時点では、調査対象となった国のうち89%が、人々の活動について何らかの制限を課していたとのこと。次に、研究チームは各経済部門がどれほどCOVID-19の影響を受けたのかを分析し、2020年1月から4月にかけて二酸化炭素排出量がどれほど減少したのかを推定しました。

分析の結果、2020年の4月上旬の時点における全世界の二酸化炭素排出量は、2019年の平均値と比較して17%も減少していたことが判明。このうち、車両などの陸上輸送による二酸化炭素排出量の減少は、全世界の排出量減少のうち43%を占めており、製造業および発電による二酸化炭素排出量も、減少量の43%を占めていました。また、航空業界はCOVID-19のパンデミックによる影響を最も強く受けた経済部門であり、2019年と比較して航空業界の二酸化炭素排出量は60%減少したものの、全体の排出量減少に占める割合は10%ほどだったとのこと。

2020年1月~4月の二酸化炭素排出量は2019年の同時期と比較して10億4800万トン減少しており、このうち中国が2億4200万トン、アメリカが2億700万トン、ヨーロッパが1億2300万トン、インドが9800万トン、イギリスが1800万トンを占めていました。この大幅な二酸化炭素排出量の減少により、全世界の二酸化炭素排出量は2006年とほぼ同じ量になったと研究チームは述べています。


COVID-19のパンデミックによる二酸化炭素排出量の減少は劇的なものですが、これはあくまでもCOVID-19対策としての都市封鎖や産業活動の停止によるものであり、一時的なものに過ぎない可能性が高いと指摘されています。

2020年6月中旬までに経済活動が元に戻り、二酸化炭素排出量もCOVID-19のパンデミック以前の水準に戻った場合、2020年の二酸化炭素排出量は2019年と比較して4%の減少にとどまります。ある程度の制限が2020年末まで継続する場合、2020年の二酸化炭素排出量は7%減少するとのこと。その一方で、政府がパンデミック後に気候変動に対処しなかった場合、パンデミック後の二酸化炭素排出量はそれ以前を上回る可能性もあるそうです。


論文の筆頭著者であり、イギリスのイースト・アングリア大学で気候変動について研究しているCorinne Le Quéré教授は、「人々への制限はエネルギー使用および二酸化炭素排出量に劇的な変化をもたらしました。これらの極端な減少は、経済・輸送・エネルギーシステムの構造的変化を反映したものではないため、一時的なものにとどまる可能性があります」とコメント。

その一方で、COVID-19のパンデミック後の経済活動を計画する際に各国のリーダーが気候変動への影響を考慮し、ある程度の変更を加えた場合は、今後数十年間にわたる二酸化炭素排出量に影響を与える可能性があるとのこと。「たとえば、都市や郊外では道路の建設を進めるのではなく、徒歩や自転車での移動をサポートする政策を進めることが、コストや人々の幸福度、空気の質において優れており、社会的距離を保つことにもつながります」と、Le Quéré教授は主張しています。

論文の共著者であるスタンフォード大学のロブ・ジャクソン教授は、「二酸化炭素排出量の減少は相当なものですが、気候変動に関する世界的枠組みであるパリ協定を達成することの課題を示しています。強制された一時的な行動ではなく、グリーンエネルギーと電気自動車による体系的な変化が必要です」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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