150年前に指摘されていた「二酸化炭素と地球温暖化の関係」が黙殺された理由とは？

by geralt

20世紀に大きな環境問題として人類総出で取り組んでいる二酸化炭素と地球温暖化の関係について、実は150年以上前に指摘する科学論文が既に発表されていましたが、世間からも学会からも無視されました。なぜ地球温暖化にいち早く注目した論文が長年にわたって無視されてしまったのかを、パブリックドメイン化した資料をインターネットに公開するThe Public Domain Reviewが解説しています。

The American journal of science. : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive
https://archive.org/details/mobot31753002152491/page/382

First Paper to Link CO2 and Global Warming, by Eunice Foote (1856) – The Public Domain Review
https://publicdomainreview.org/collections/first-paper-to-link-co2-and-global-warming-by-eunice-foote-1856/

1856年、アメリカの女性科学者だったユニス・フートは、4つの温度計、2つのガラスシリンダーとエアポンプを使い、大気を構成する成分を分離しながら太陽光と日陰でガラスシリンダー内の温度変化を測定。その結果、フートは二酸化炭素や水蒸気に熱を保持する効果があることを発見しました。

以下の画像は、二酸化炭素についての発見を報告するフートの論文「Circumstances Affecting the Heat of Sun's Rays(太陽光の熱による環境の影響)」の一部です。アメリカで最も古い学術誌の1つである「The Journal of American Science」の1856年11月号に収録されています。

「二酸化炭素が温室効果ガスである」という事実は、現代気象学や気候科学の重要な原則の1つです。さらにフートは論文の中で「二酸化炭素の大気は地球の温度を高くします。もし地球の歴史上のある時期で、二酸化炭素が現在よりも大きな割合で大気に含まれていたとしたら、温度の上昇が必然的に生じたに違いありません」と論じ、地球温暖化と二酸化炭素の関係についても明言していました。

しかし、フートの画期的な発見は学会はおろか世間からも注目されることはありませんでした。当時は女性の社会的地位は現代に比べて圧倒的に低く、フートは1856年に開催されたアメリカ科学振興協会の学会で論文の発表を行うことを禁じられたためです。フートの代わりに論文の発表を行ったヘンリー教授はフートの論文を高く評価しており、「科学に国も性別も関係ない」と主張しましたが、結局フートの発表は学会の年次会報に掲載されなかったとのこと。

また、19世紀のアメリカの学会は、ヨーロッパの学会と比べると権威がなかったことも、フートの論文が注目されなかった原因の1つとなりました。フートはのちにレンセラー工科大学となる技術学校で科学の授業を受けていたものの、大学に正式に雇用されずにニューヨークの片田舎で細々と研究を続けるアマチュアの科学者に過ぎず、フートがヨーロッパの著名な科学者と交流を持てることはあり得ませんでした。

by Carlyn Iverson

フートの研究が発表されてから150年以上経った2010年に、石油地質学者のレイ・ソレンソン氏が古い文献を読んでいた時にフートの論文を発見し、2011年にフートが既に二酸化炭素と地球温暖化の関係性に気づいていたことを発表。2018年にカリフォルニア大学サンターバーバラ校で開催されたシンポジウムで、フートの気候科学についての研究が学会から排除されていたことが認められ、フートの研究はようやく多くの人に再評価されました。