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うつ病の人々は悲観的なのではなく「世界を正しく認識している」のかもしれない

by Free-Photos

多くの人々はうつ病になると世界に対する認識がゆがむと考えており、「うつ病の人は物事を悲観的にとらえるようになってしまう」と思われています。しかし、うつ病を研究する専門家の中には、「うつ病の人々は悲観的なのではなく、むしろ世界を正しく認識している」という考えを支持する人が多くいるそうです。

Depressed People See the World More Realistically - VICE
https://www.vice.com/en_us/article/8x9j3k/depressed-people-see-the-world-more-realistically

「うつ病の人はそうでない人よりも現実を正しく認識している」という考えは、「抑うつリアリズム」と呼ばれるものです。抑うつリアリズムの存在が事実だとすれば、うつ状態でない多くの人々は、現実をポジティブな方向に曲解してとらえていることになります。


抑うつリアリズムについて最初に示したといわれる1979年の研究では、うつ状態の被験者とそうでない被験者に、たまに緑色の光を放つライトとボタンを与えました。その後、被験者に渡したボタンを自由に押させ、「あなたがボタンを押したことでライトが光るタイミングをどの程度制御できたと思いますか?」と尋ね、自分がボタンを押した影響について評価してもらったとのこと。

実はこの時々光るライトとボタンには何の関係もなく、被験者がボタンを押したタイミングや頻度とは無関係にライトが点灯していただけでした。ところが、うつ状態ではない被験者は「自分がボタンを押したことでライトの点灯タイミングなどを制御できた」と考えやすかったそうで、対照的にうつ状態の被験者は、「自分がボタンを押してもライトに影響はなかった」という正しい評価を下せる傾向がみられました。

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シェフィールド・ハラム大学のColin Feltham教授は、「全ての心理学者ではないものの、多くの心理学者にとって抑うつリアリズムは実りある仮説だとみなされています」と述べています。Feltham教授は「Depressive Realism: Interdisciplinary perspectives」という書籍を著しており、多くの抑うつリアリズムに関する研究を調査してきたとのこと。

Feltham教授は、抑うつリアリズムが「Terror Management Theory(脅威処理理論)」という理論と関連しているかもしれないと指摘します。脅威処理理論において、人間は自分がやがて死ぬということを認識しつつも、死という恐ろしい概念に直面することを避け、一種の妄想的思想に逃避して自らを欺いているとされています。

「一部の心理学者は、人間が幸福であるためには自己欺瞞的な要素が必要かもしれないと認めています」とFeltham教授は述べ、一般的な人々は多少の幸福な妄想をし続けている状態にあるかもしれないとのこと。一方、うつ状態の人々は幸福な妄想を受け入れることができず、より現実を直視してしまいがちな可能性があります。

by Tess Emily Seymour

Feltham教授が抑うつリアリズムを経験しやすい人に挙げているのは、内向的な人、男性、IQの高い人、そして軽度のうつ状態にある人だそうです。なお、重度のうつ状態にある人では、現実を直視するよりもさらに悲観的な方向へと思考が偏りがちだとのこと。

しかし、全ての心理学者らが抑うつリアリズムの仮説に賛成しているわけではなく、たとえばアデルファイ大学のMichael Moore教授は、抑うつリアリズムについて懐疑的な研究者の一人です。合計で7000人以上が参加した75個の抑うつリアリズムに関する研究を分析した調査では、「確かに抑うつリアリズムの証拠がみられるものの、非常に狭い範囲の刺激に限定して発生することが示されました」と、Moore教授は指摘しています。

Moore教授はうつ状態の参加者が現実を正しく認識していたのではなく、制御された実験の状況が、たまたまうつ状態の参加者が正しい判断を下しがちな状況だった可能性があると述べています。たとえば、「ボタンとライトの間に何の関係もなく、ボタンを押してもライトに影響を与えられない」という状況は、うつ状態の人々の悲観的な思考に一致しやすいといえるかもしれません。

記事作成時点では、抑うつリアリズムが確かに存在するとはっきり断言することはできません。しかしMoore教授は、抑うつリアリズムの研究が、うつ病患者に対するより効果的な治療を施すために役立つかもしれないと考えています。うつ病の治療に多く使用される認知療法では、「うつ病患者が自分の状況を悲観的にとらえている」という仮説のもと、偏った認知を修正しようと試みます。しかし、もし抑うつリアリズムが証明され、「うつ病患者は悲観的なのではなく、現実を直視しているだけだ」と判明した場合、認知療法のあり方が変化する可能性があるとのことです。

by Nathan Cowley

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in メモ, Posted by log1h_ik

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