肉を食べないことで地球環境を救えるのか、実際に計算するとこうなる
by reeimage4life
肉牛などの家畜は、肥育する過程で強力な温室効果ガスであるメタンガスを大量に放出することから「地球温暖化を止めるには私たちが肉や乳製品を食べなくなることが不可欠」だとする主張や研究結果は枚挙に暇がありません。そこで、アメリカの月刊誌Reasonが「実際にアメリカ人が肉を食べるのをやめたらどうなるか?」を計算してみたところ、意外な結果になったことを報告しています。
Can Vegetarianism Stop Climate Change? – Reason.com
https://reason.com/2019/10/07/can-vegetarianism-stop-climate-change/
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2019年8月に公開した「土地関係特別報告書」の中で「肉を消費することが気候変動の要因の1つになっている」ことを示唆するデータを発表。これを受けて、世界中の紙面で「気候の専門家がより多くの野菜とより少ない肉を食べることを勧奨」「地球を救うために肉を食べる量を減らそう」との見出しが躍りました。
by Christine Sponchia
そこで、Reasonの科学特派員を務めるロナルド・ベイリー氏は「世界平均の2倍も肉を食べているアメリカ人が一斉に菜食主義者に転向したらどうなるのか?」を実際に試算してみることにしました。
アメリカの農務省によると、2019年におけるアメリカ人1人当たりの食肉の年間消費量は推定220ポンド(約100kg)だとのこと。ベイリー氏がこの「1人当たり100kg」という結果に、アメリカの非営利団体Environmental Working Group(EWG)が公表している「肉1kgを消費するごとに排出される二酸化炭素の量」を掛け合わせたところ、1.4トンという結果となりました。さらに、この「1人当たり1.4トン」をアメリカで取り組まれている(PDF)地域温室効果ガスイニシアティブにおける金銭的価値に換算するとたった8ドル(約860円)にしかならないとのこと。
また、バージニア工科大学で畜産学を研究しているロビン・ホワイト氏とアメリカの農業研究事業団の研究者であるメアリー・ベス・ホール氏の共同研究でも「アメリカの食料生産システムから動物を除外した場合の総温室効果ガス排出量の減少はわずか2.6%」との研究結果が出ており、ベイリー氏の主張の裏付けとなっています。
by Alex_star
こうした結果を踏まえ、ベイリー氏は「肉を食べるのをやめるだけでは、気候変動にはほとんど影響がありません」と述べて、肉を食べる習慣だけを標的にしても地球を救うことにはならないとの見方を示しました。
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