牛に海藻を食べさせることで「げっぷ」を減らし地球温暖化を防ぐ方法が模索されている
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メタンは天然ガスの主成分として知られていますが、同時に地球温暖化の原因となる温室効果ガスとしても有名であり、同量の二酸化炭素の20倍以上もの温室効果をもたらすとされています。メタンは牛などの草食動物が出すげっぷや糞にも含まれていますが、牛が出すげっぷを「海藻を食べさせることで減らす」という試みが進行中です。
Burp-free cow feed drives seaweed science at USC | University of the Sunshine Coast
https://www.usc.edu.au/explore/usc-news-exchange/news-archive/2019/august/burp-free-cow-feed-drives-seaweed-science-at-usc
This Tasty Seaweed Reduces Cow Emissions by 99%—and It Could Soon Be a Climate Gamechanger
https://www.goodnewsnetwork.org/gamechanging-pink-seaweed-reduces-cow-emissions/
牛のげっぷに含まれるメタンは地球温暖化を加速させる要因の一つとみられており、畜産によるメタン排出量は全世界におけるメタン排出量の20%以上を占めているとのこと。そんな牛のげっぷを防ぐため、研究者らは牛の品種改良を模索したり、オレガノという多年草をエサに混ぜてげっぷを防いだりする試みを行ってきました。
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そんな中、畜産が盛んなオーストラリアの研究機関であるオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は2014年の研究で、カギケノリと呼ばれる種類の海藻が牛のげっぷを99%抑制する効果を持つことを発見しました。
カギケノリは紫がかった淡紅色をしたふわふわと崩れやすい海藻で、日本やヨーロッパの沿岸のほか、オーストラリアのゴールドコーストの沖合に繁茂しています。サンシャインコースト大学で生物学の准教授を務めるニコラス・ポール氏らの研究チームは、カギケノリをほんの少し牛のエサに混ぜるだけでげっぷをほぼ完全に減らすことができるとして、研究を続けています。
ポール氏は、「海藻は牛が自発的に食べることがある食物です。牛は実際にビーチまで歩き、海藻をかじることがあります」と述べ、海藻であるカギケノリを牛のエサに混ぜても大きな問題はないだろうと考えています。また、カギケノリをエサに混ぜる量は全体の2%未満でいいそうで、「カギケノリには牛の胃に生息する微生物を減らす化学物質が含まれており、牛が草を食べた後にげっぷするのを完全に防ぐことが出来ます」とポール氏は述べました。
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ポール氏は、「カギケノリは世界的な関心を集めています。世界中の研究者が、カギケノリを牛に食べさせても健康が損なわれず、牛肉と牛乳が良質なままであることを確認するための研究に取り組んでいます」と語っています。研究チームはオーストラリア国内の全ての牛が食べるエサにカギケノリを混ぜることができれば、オーストラリアが排出する温室効果ガスの10%を削減できると考えています。
そのためにはカギケノリの安定的な供給が必要となるため、研究チームはカギケノリを生長させる方法を研究しているとのこと。カギケノリの生産方法を確立し、将来的には牛だけでなく羊やヤギにもカギケノリを含んだエサを与えることで、多くの国々で温室効果ガス排出量を削減できるそうです。
研究チームの一員であるアナ・ウェグナー氏は、「私たちは牛のメタン排出を減らす働きを持つ、カギケノリの化学組成を知っています。カギケノリに含まれる化学物質の濃度を最大化して、同じ効果をもたらす海藻の量をより少なくしたいです」と語りました。
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